3学年だより「人生のコスパ(2)」
夢に向かって努力することの「コスパ」はどうだろう。
ピアノでもバレエでもフィギュアスケートでも野球でもサッカーでも、プロとして活躍する人には、幼い頃から莫大な投資がされている。
親は、子供が物心つくかつかないうちから、先生をみつけ、お弁当を作ってレッスンの送り迎えをする。レッスン代や用具にかかるお金は、一般的な家庭が負担する額としてはきわめて高額なものになるから、親は生活のすべてを捧げるといってもいいレベルで子供に投資する。
それらのコストに見合うパフォーマンスを得られる人はどれくらいるだろう。
そこまでしても、プロになれるのはほんの一握りの人たちだ。
かりにプロになったとしても、その時点までに投資された資本総額を上回る収入を得られる人の比率は、さらに低くなる。
では、親子で夢に向かってがんばるのは、「コスパの悪い」ばかげたふるまいだろうか。
~ ところが、そう考えるとスポーツ選手やアーティストは「ものすごくコスパの悪い人生」です。成功が保証されてないのに、子ども時代から遊ぶ時間を削って打ち込む。プロになれれば良いけど、99%の人はどっかの段階でプロを断念します。
じゃあそういう人たちを私たちは「コスパが悪いから損」と笑うのか? いいえ。「打ち込む夢があって、いいなぁ」とうらやむんです。 ~
受験勉強は、考えようによっては、ものすごくコスパはいいと言える。
あまりにも露骨なデータになるので詳細は載せないが、どの大学を卒業したかによって、平均生涯賃金には相当の開きがうまれるという現実があるからだ。
しかしそれはあくまでも平均であって、「最難関大学を卒業すること=稼げること」ではない。
「収入の多さ=幸せの大きさ」と言えない面もある。つまり最後は個人の問題に帰する。
~ 「白菜なんてどれも同じ」と考える味オンチは、白菜をコスパのみで考えます。
同様に「人生なんてどう生きたってつまんない」と決めつける未熟者は、人生をコスパだけで考えちゃう。未熟者だから、自分の人生がどれだけ豊かになりうるのか、が発想できないからです。 あなたの場合、「育児が好きでもないのに、子どもが三人もいる」という現状は、あきらかにコスパの悪い人生です。でも同年代やその前後の男性からみれば、あなたはメチャクチャ贅沢に見えるはず。……いまどき、三人の子どもを持つ30代男性なんて、何十人に一人ですよ? 周囲から見たらあなたはものすごく「ゼイタクで充実してる」んですよ。……現状は「たいへんだけど、他人から見たらゼイタクで充実してる人生」です。これを楽しめるように、夫婦揃って負担を下げましょう。 (岡田斗司夫「悩みのるつぼ~子育てはコスパが悪い?」朝日新聞) ~
コスパの悪い人生を送れるのは、実は幸せなことなのだ。