3学年だより「時間との闘い(2)」
センターの英語や国語が80分ではなく120分あったら、平均点はあがる――。
笠見未央先生のおっしゃることは正しいだろう。「大幅に」あがるかどうかは疑問だが。
センターまでの残り日数が40日ではなく60日だったら、やれることは増える。
今のみなさんなら、プラスされた20日間を有効に使えるだろう。
もし追加で自分だけ40日もらえたなら、ほぼ無敵ではないだろうか。
しかし400日だったら――。いやそこまではちょっと…、となるような気がする。
と考えるなら、時間の有効性は、間際になってはじめて本気で意識できるものなのだろう。
~ スタッフルームを出て、わたしたちは一列になって、新幹線ホームへ向かう。
半地下の通路を、斜め上の線路を見上げながら進んでいく。階段を越え、表側へと出る。23番線に立つ。二階建て新幹線MAX、2号車を待つため、配置に着き、わたしは気を引き締める。7分間で清掃するには、それぞれが自分たちの作業を滞ることなく、こなす必要がある。
「別に、掃除の速さを競っているわけでもないからね」と以前、鶴田さんが言っていた。「たまたま、7分しかないから、その間でできる限りのことをやっているだけで」
最近は、わたしたちの新幹線清掃の仕事も雑誌やテレビで取り上げられることが増えた。自分たちのことが評価されるのは光栄で、誇らしいことではあるものの、7分間でぴかぴかに。世界最速の清掃! とその、「仕事の速さ」や「効率性」に注目されることが多いのも事実だ。もちろん、わたしたちは精一杯頑張って、その、「7分間の清掃」をやり遂げているのだから、褒められればうれしいが鶴田さんが言うように、「15分かけて掃除していいのだったら、15分かけて、もっときれいにできる」という思いもある。
7分しかないから、7分で頑張っている。鶴田さんが引用した、パウエルさんの言葉ではないが、ただ、ベストを尽くしているだけだ。
アナウンスが聞こえる。下り側から、ゆっくりとやってくる車両が見えた。
わたしはじっとホームに立ち、お辞儀をする。横に、新幹線が滑り込んでくる。自分がそのまま前に走り出すような錯覚に襲われることもある。風がかかる。新幹線がブレーキをかけ、停止したところで、わたしはお辞儀をやめる。さあ、仕事だ。 (伊坂幸太郎「彗星さんたち」『エール!3』実業之日本社文庫) ~
どんなに時間を有効につかえる人でも、高校生として過ごせる時間は3年間だ。
本校だけ4年間あって最終学年まで部活の大会に出られるなら、歴史的に結果を残した今年以上の成果をあげられるだろう。
しかし、すべての人にとって一日は24時間1440分であり、センターの国語や英語は80分だ。
あと10分あれば、3日あれば、一年早く生まれたら……などと言い出したらきりがない。
いつ、どれだけの時間を与えられるか、神様以外にはどうすることもできない
われわれ人は、与えられた中で「ただベストを尽くしているだけだ」。さあ、勉強だ。