水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

キンキーブーツ

2021年04月11日 | 演奏会・映画など
 たしか昨年、日本版のミュージカルが東山紀之さんらの出演で……と書こうとして、調べたら違ってた。
 東山さんは「チョコレート・ドーナツ」だ。そこでドラァグクイーン(女装のショーダンサー)を演じたのが東山さんだ。
 「キンキーブーツ」も、二人いる主人公のうち一人が「ローラ」と名乗るドラァグクイーンだ。
 もう一人は、イギリスの片田舎にある靴工場の一人息子のチャーリー。

 時代の流れか、昔ながらの生産工程でていねいに作られる靴は、売れなくなっていた。
 悪化する一方の経営状態だが、チャーリーは、ロンドンに出て婚約者と新しい生活を築こうとしていた。
 しかし、父親が急逝し、チャーリーは後を継がざるを得なくなる。
 従業員をリストラして工場を閉鎖しようとするものの、「私たちの生活をどうしてくれるんだ」と詰め寄られ、決断できない。
 もともと幼い頃から家族のように暮らしてきた人達だ。
 しかし、どうすればいいのか。何か方法はあるのか。ある日、ロンドンの街中でローラと出会う。
 街中でからまれている「彼」を見かけ救い出そうとする。実際にはローラの方が強かったのだが。
 それがきっかけで仲良くなり、ショーを観に行くことになる。
 「ブーツがボロボロよ」と楽屋で嘆くローラに、「そんなヒールの高いブーツが、男の体重を支えられるわけないだろう」と声をかける……。そうか、男性もはけるブーツは、ニッチな需要があるのではないか……。
 こうして二人の出会いから、新しいタイプの風変わりなブーツ(キンキーブーツ)が誕生するという、実話に基づくストーリーだという。
 産業構造が大きく変わる時代、しかし人権意識はまったく変わらず、女は男より下位におかれ、「女装する男など人間ではない」ぐらいに思われていた時代の話だ。LGBTなんて言葉はもちろん存在しない。
 主人公チャーリー自身、ローラと仲良くなった後も、ローラを気持ち悪いと思う気持ちを捨てきれないでいた。
 しかし、自分を偽らず懸命に生きるローラや、自分を支えてくれる人達の存在に気づき、自分の生き方を見直していく。

 笑いと涙、キレキレのダンスや、切々としたバラード。
 登場する人物すべてがキャラ立ちまくりで、ちょっとした役の人もみんな、お芝居も歌もとんでもないレベルだろうと思われる。
 日本のミュージカルだと、どうしても知名度優先のなんちゃってミュージカル風のキャストの方を見かけることがあるが、さすがブロードウェイミュージカルはそうはいかないだろう。
 本場の舞台をそのまま映画館で鑑賞できるなんて、すばらしい企画ではないか。
 「え?3000円」と一瞬でも考えた自分を恥じる。どうしようかなと思った自分を、今は張り倒しにいきたい。
 音楽に関わる者として、人前で何からかのパフォーマンスをしようとする者として、観ない選択肢はない。
 ていうか、3000円は安すぎる。現地で観ようとしたら、往復の航空運賃、宿代、当然チケット代もあるし、食べ物もいる。絶対おみやげ買うし、たぶん30万でも全然足りないよね。
 音楽もよかった。ポップで、どこか懐かしい感じもして、緩と急、メジャーとマイナーのバランスも見事。あとでシンディローパーの仕事と知って納得した。チャーリーを好きになる従業員の女の子のソロ曲が自分的には白眉だった。
 映像化してくれたおかげで、役者さんの表情もよくわかるし、客席の興奮も伝わる。本場の客はのりがいい。
 ミュージカルの、いや全てのエンターテイメントのお手本とはこれだと感じさせる「キンキーブーツ」。ぜひ、劇場へ!
コメント (2)
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