水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

遺伝子の「on」「off」(3)

2021年04月28日 | 学年だよりなど
1学年だより「遺伝子の「on」「off」(3)」


 遺伝子のスイッチのユニークなところは、環境の変化に応じてDNAの塩基配列を変える(「変異」という)ことではなく、遺伝子の使い方を変えることにある。
 私たちはよく、「一ヶ月ほど体をしぼって筋肉質になろう」とか、「来週からは早起きして朝型で勉強しよう」などと考える。心を入れ替えて生活習慣を変えてみようと。
 そしてその決意の多くは未遂に終わる。なぜだろう。
 人の本質はそうそう変わるものではないと、心のどこかで思っているからではないか。
 しかし現実には、生活習慣によって、遺伝子レベルの変化をおこすことが可能なのだ。
 体を構成する物質が、分子レベルではものすごい早さで入れ替わっていることも考え合わせると、人間というのは、環境や自分の意志によって、想像以上に変化できる生き物だと言える。
 そう考えると、入学時には想像もできないレベルに成長していった先輩達の姿も納得できる。


~ 私たちの体は、生活習慣やさまざまなストレスなどを含む「環境」の変化にさらされると、その環境に応じた変化、つまり適応していくようにできています。そのための機能がDNAには備わっており、いわば、“主人”である私たちが日々どんな環境で生きているかを敏感に察知して、それに合うように遺伝子の働きを柔軟に、すばやく変化させることができるようなのです。
 体の内なるDNAは、常に外の世界とも会話していて、“DNAのスイッチ”がその“通訳”のような役割を担っているのです。こうしたDNA像は、従来の「生まれ持ったDNAは不変」という静的なイメージとは大きく異なる、新たな世界観とも言うべきなのです。
 ……今までこうした“DNAのスイッチ”の変化はそう簡単には起きないと考えられてきましたが、食事や運動などの外部環境に合わせて、驚くほど柔軟に、すばやく遺伝子の働きが変化することがわかりつつあり、そのダイナミックさに驚いています。 ~


 たとえば「記憶力アップ」は多くの人の切実な願いだ。
 記憶力アップの遺伝子をオンにするにはどうすればいいか。その方法は、ランニングだという。
 運動によって、脳の細胞のなかのDNAメチル化酵素の数が減少し、年齢とともに折りたたまれていた遺伝子がほどけはじめ、スイッチがオンになるという。
 「文武両道」の科学的根拠が、まさか遺伝子レベルで解明されつつあるとは、驚くしかない。
 新陳代謝の著しい十代、新しいものに挑戦しやすいみなさんの年代は、その気になりさえすれば、短い期間で全く「別人」になることが可能だ。
 なぜ学ぶのか、なぜ体を鍛えるのか、その答えは明確ではないか。
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