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怖い絵(3) 中野京子

新書版を入れて、同シリーズの4冊目。ますます「怖い絵」は絶好調である。前回「絵の怖さにはいろいろある」と書いたが、本書に納められた絵の場合は、近代以前の「生きていくことそのものの怖さ」を反映したようなものが多いような気がした。要するに、近世以前の人間は、突然降りかかってくる自然災害の脅威に怯え、原因不明の疫病に怯え、魔女狩りのような理不尽な社会の営みに怯え、夜にはちゃんと明日が来るのかどうかさえ定かでない状況のなかで暮らしていたのだろう。そうした様々な恐怖と隣り合わせの日常の中で作成された絵も、自然とそれらを意識した「怖さ」を表現したものになる。そんな絵ばかりが並んでいる。本書の中では「皇女ソフィア」の項目で、ソフィアを監視する衛兵の視点で書かれた描写が抜群に面白かった。あとがきに著者自らが本書のことを「完結編」と呼んでいるので、もう続編4,5,6はないのだろうか。そんなこといわずに是非書いて欲しいと多くの読者が思っていることだろう。(「怖い絵(3)」中野京子、朝日出版社)
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