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ダーウィンの夢 渡辺政隆

バージェス頁岩動物群に関する本だと思って読んだのだが、本書はそれよりもはるかにスケールの大きい生命の進化の歴史を眺望する本だった。バージェス動物群に関する記述はごくわずかなのだが、それで「はずれ」だと思ったかというと、全く逆で、本書を読んで本当に良かったというのが現在の感想だ。例えば、本書では、カンブリア紀の生命の爆発の原因について2つの説が提示されているが、そのうちの「視覚を手に入れた動物の出現が生物間の生存競争の前提を大きく変えてしまった」という説は、初めて聞いた話で大変面白かった。また、恐竜の大絶滅以外の大絶滅の話も、初めて知った事実が多く、面白かった。さらに、本書を読んで驚いたのが、本書の著者がバージェス動物群に関する古典的名著スティーブン・ジェイ・グールドの「ワンダフル・ライフ」の翻訳者だったということだ。「ワンダフル‥」の面白さはこのブログでも書いたが、本書は、「ワンダフル…」を読んだ後に読む本として最適な本のような気がする。「ワンダフル‥」でバージェス動物群のすごさを知り、本書でその歴史全体の中の意義を考えられるからだ。文体は、福岡伸一の本のリリシズムが好きな読者には、抑制的な文体がやや物足りない感じがするが、充実した内容の確かさがそれを十分カバーしている。(「ダーウィンの夢」渡辺政隆、光文社新書)
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