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ロングロングアゴー 重松清

語り手が子ども時代の友達や出来事を振り返り、今の自分がその時の相手と色々な形で再会するという統一テーマの短編集。子ども時代の自分のなかに、子ども特有の未熟さやずるさがあったことを確認しながら、その時から自分が変わったこと、変わらないことを見出していく。自分も他人も社会もそれぞれに変わってしまうものだと感じつつ、それを肯定的にとらえていく著者のまなざしが暖かい。昔になればなるほど「貧富の差」といった理不尽なものに翻弄される人間という色彩が強くなるのは、人間というものが社会ほどには急速に変化しないからだろう。それを感じながら読んでいると、著者はそうした人間の本質のようなものを書きたかったのではないかと感じる。(「ロングロングアゴー」 重松清、新潮文庫)

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