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楽園のカンヴァス 原田マハ

元キュレーターという経歴の著者が、満を持して世に送り出した、自分の専門領域である美術界についてのミステリー。画家の絵の値段というものが非常に曖昧なものであることから生じる画商と画家、あるいは画商とコレクターの複雑でややダークな関係は、よくミステリーの題材になるが、本書では、美術館のキュレーターという職業の人間がそれに加わり、さらに複雑な関係や思惑が錯綜する。本書は、今年の直木賞候補作として最後まで受賞作と争った作品で、結局は「作中作にやや難あり」ということで受賞を逃したようだ。受賞した辻村深月は私も大好きな作家で彼女の受賞は当然といえば当然だと思うが、本書も彼女の作品に劣らず面白い。次作でどのような美術界の内幕を見せてくれるのか、それが本当に楽しみだ。(「楽園のカンヴァス」 原田マハ、新潮社)

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