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エデン 近藤史恵

著者の「サクリファイス」シリーズの第2作目。同シリーズは既に第4作目が刊行されているので随分遅れを取ってしまった感じだが、かなり昔に買って読んでいなかった本書を今回なんとなく読んでみた。本書の舞台である「ツールドフランス」については色々断片的な知識はあるが、そうした知識の確認以上にその舞台裏の葛藤のようなものがうまく描かれていて、これはやはり「題材の選択」の勝利だなぁと感じた。一般的にある程度知られているが深いところまでは知らないという題材が、読み手の興味をそそる。ほとんど知られていない世界だとなかなか興味の持ちようがない一方、知られ過ぎた世界だと興味を持つような話を作り上げるのが大変になる。その中間くらいの話が、「大体知っていたとおりだが、さらにそんな奥があったのか」という感慨のようなものが生じるのだろう。前作を読んでからかなりの時間が経っているので、誰が主人公で、どういう人物だったのかも全く思い出せないし、本書でも多くは語られていないが、それについては何の不自由も感じなかった。次の第3作を読むまでにまたかなり時間が経ってしまうかもしれないが、それでも構わないということだけは覚えておこうと思った。(「エデン」 近藤史恵、新潮文庫)

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