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マーチ博士の4人の息子 ブリジット・オベール

本書の帯には、「悪童日記」のアゴダ・クリストフが絶賛した作品という言葉が書かれている。裏表紙のミニあらすじを読むとミステリーのような感じなので、それをアゴダ・クリストフがコメントするというのは一体どういうことなのか、そもそもこの本はどういうジャンルの本なのかの、それが不思議で読むことにした。話は、ある家に住込みで働くお手伝いさんが、家の中の誰かが書いたと思われる日記を発見、その中にこれまでに犯してきた殺人事件の告白が書かれていていることで、犯人探しが始まるというミステリーだ。延々と殺人者とお手伝いさんの日記のやり取りが続き、さらにいくつもの殺人事件がおこるのだが、巧妙に犯人が誰なのか判らないように仕組まれている。読んでいて、意外な犯人ということで色々想像してみたが、最後の結末はどの推理にも当てはまらない意外なものだった。解説を読むと、その結末にはいくつか難点があるらしいのだが、もう一度読み直してそれを検証しようにも、話が錯綜しすぎていてそれさえもままならない感じだ。ミステリーを楽しむという観点からすると、延々と続くやり取りをもう少し短く、シンプルにしてほしいというのが正直なところだが、読んでいる最中のサスペンスを楽しみたいということであれば、この長々と続く緊張感がたまらない魅力でもある。犯人探しを続けるお手伝いさんにたっぷりと感情移入できれば、これほど面白い作品は稀かも知れない。(「マーチ博士の4人の息子」 ブリジット・オベール、ハヤカワ文庫)

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