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海妖丸事件 岡田秀文
いつも買っている本屋さんの推薦コーナーで見つけた1冊。「月輪探偵シリーズ」第3弾と銘打っていて、前2作を読んでいないので内容についていけるかどうか少し不安だったが、読んでみると、そのあたりはちゃんと配慮されているようで、全く問題なかった。枚葉は、明治時代を舞台にしたミステリーで、そのため指紋とかDNA鑑定といった科学捜査は一切登場せず、探偵がよりどころにするのは、動機と機会の2つのみということになる。これはミステリーを書く際の制約になるには違いないが、科学捜査が使えないという点では、閉ざされた空間で起こる密室事件を得意とするいわゆる「本格もの」の王道ともいえるシチュエーションにすぎない。雪に閉ざされた山奥の別荘で、たまたま現場に居合わせた名探偵が、雪がやんで警察が駆けつける前に事件を解決してしまうというお得意のパターンと同じである。そう考えると、明治時代を舞台にするというのは、ある意味、本格ものミステリー作家にとっては、無理なく本格ものの状況を作り出すのに好都合なのかもしれない。本署のトリックは、かなりよくできていると思うが、なぜか私は偶然、本書に登場する大きなトリックを2つとも予想できてしまった。読んでいる途中で、自分自身であるトリックを思いついたのだが、読んでみたらそのトリックがそのまま使われていたので、びっくりした。そんなこともあるんだなと変に感心してしまった。(「海妖丸事件」 岡田秀文、光文社)
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