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父からの手紙 小杉健治

初めて読む作家の作品。時代小説を数多く出している有名な大作家らしいが、その辺りを殆ど読まないので、名前は知っていたが読む機会がなかった。時々行く大型書店で平積みになっている本書を見つけて、面白そうなので読んでみることにした。内容は、10年前に突然失踪した父親から毎年娘を案じる内容の手紙だけが届くという若い女性の話、同じく10年前に殺人事件を起こして服役し出所したばかりの男性の話、この2つのストーリーがその関連性が謎のまま並行して描かれる。読者には2つの出来事が同じ頃に起こったということはわかるが、それ以外にこの2つがどのように関連していくのか予想がつかないまま話が進んでいく。ようやく200ページあたりでこの2つが合流して全体像がうっすらと見え始め、主人公2人は試行錯誤しながら真相にたどり着く。解明された謎については、ちょっと警察の捜査を見くびり過ぎているようなところが気になるが、全体の構成の見事さには圧倒される。著者の本をもう少し読んでみたくなった。かなり前に刊行された作品だが、平積みにしてくれた本屋さんに感謝したい。(「父からの手紙」 小杉健治、光文社文庫)

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