書評、その他
Future Watch 書評、その他
東南アジア全鉄道制覇の旅タイミャンマー編 下川裕治
タイとミャンマーの鉄道路線を完全制覇するという目標に向かって、過酷な旅を続ける紀行文。タイ編がすんなり終わったと思ったら、ミャンマーの全鉄道路線制覇には想像を絶する困難があった。時刻表はあっても無いようなもので、その場に行ってみなければ何時の列車があるのかわからないし、動いている列車があっても一日中一往復のみというのは当たり前。駅の近くに宿もない。客席には窓ガラスもなければドアもない。40度を超える酷暑なのに冷房や扇風機もない。灯りがなく真っ暗闇になってしまうことさえ。座席には無数の虫。よくここまで悪条件があるものだと感心してしまう。普通に乗るだけでも大変なのに、さらに全路線制覇には独特の困難がつきまとう。ミャンマーには最近まで外国人の立ち入りが禁止されていた地域があって、それが大きなネックになるだろうことは想定されたが、困難はそれだけではなかった。全国の鉄道路線図がどこにもないしそれを誰に聞いても分からないのでゴールが見えない。ある路線などは地図にはあるのだが、今は走っていないと言われ、しかも完全に廃線になったのか一時的な不通なのかも判然としない。著者の直面する苦行にただただ大変だなぁと思うばかりだ。普通の旅の参考には全くならないし、ミャンマーでの汽車の旅は絶対にすまいと言うのが本書読後の感想だが、読み物としては大変面白かった。(「東南アジア全鉄道制覇の旅タイミャンマー編」 下川裕治、双葉文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )