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ローマへ行こう 阿刀田高

著者の本は学生時代に何冊か読んで面白かったという記憶がある。久し振りに著者の本が本屋さんで平積みになっているのを見かけたので読んでみることにした。読んだ感想は何もかもがレトロっぽいということだ。登場人物の名前、考え方、ストーリー、出てくるアイテム、文章そのもの、全てが最近書かれた小説とは違うレトロな感じを醸し出している。巻末の「初出誌」を見ると書かれたのはいずれもここ10年のことで、ことさら古い作品を集めた訳でもないらしい。また、本書の短編は、結末がはっきりしないものや不思議が不思議のままで終わるものばかり。「余韻を残して読者に解釈を委ねる」と言えば聞こえは良いが、ちゃんとしたオチがなくて良いのであればいくらでも物語は作れるといった批判は避けられないだろう。人気作家の小説であればそれでもニーズがあったという時代の遺物かもしれないが、逆に常に新しいサプライズを求めて疲弊してきている出版業界へのアンチテーゼと言えるかもしれない。(「ローマへ行こう」 阿刀田高、文春文庫)

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