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そして陰謀が教授を潰した 早瀬圭一
ちょうど50年前に起きた「青山学院大学教授女学生暴行事件」の謎を追い続けた元新聞記者がその経緯をつづったルポルタージュ。私自身「あの事件だったかな」と思ったが、私が記憶していたのは当時すごく騒がれた「立教大学教授女子学生殺害事件」のことで、それとは別の事件だった。本書が扱っているのはちょうど立教大学の事件と同じ年に起きた別の事件で、立教大学の事件の方が非常に衝撃的だったので記憶に残り、それと混同してしまったようだ。この事件は、すでに裁判で有罪が確定、犯人とされた教授も3年の刑期を全うして出所済み、出所後も無実を訴え続けていたが、支援者達が再審請求受理の可能性を検討中に本人が死亡してしまったという事件だ。当時、事件の舞台になった青山学院大学では、校内の権力争い、地上げ屋の陰、国際部設立をめぐる校内対立など不穏な動きが多く、事件当初からこの事件には裏があるのではないか、教授は何らかの策略に巻き込まれたのではないかという空気が強かったという。これを察した様々な新聞社の記者や週刊誌のライターがその闇を暴こうとしたが、疑惑は疑惑のまま終わり真相を突き止めるまでには至らなかった。本書では、著者自身の根気強い取材だけでなく、色々な記者やライターが中途で追求を断念した資料を駆使して、著者がどこまで真相に迫れたかが詳細に語られている。本書の読みどころは、何人かの記者やライターからの資料を「真相を突き止めてくれ」という彼らからの負託と考える著者自身の首尾一貫した「記者魂」だ。(「そして陰謀が教授を潰した」 早瀬圭一、小学館文庫)
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