goo

反〈絆〉論 中島義道

東日本大震災以降の日本で、被害にあった人々を勇気付ける言葉として使われるようになった「絆」という言葉に対して著者が感じる違和感、重苦しさを語る一冊。最近よく言われるようになった日本社会の「同調圧力」よりも更に奥に潜む個々人を拘束する雰囲気を象徴するのが「絆」という言葉であり、その背後にあるのが無意識の暴力性だと指摘する。確かに社会にはびこる同調圧力に対する警告はよく耳にするが、そうした人々にも無意識に抵触してはいけないと感じている不文律がある。人間は多様だと言いながら、これは全ての人にとって良いことだと信じているものがある。他人に対して寛容であれという一方で、例えば街の騒音に強いストレスを感じてしまう人々のことには考えが及ばない。他者に寛容であれ、人はそれぞれと言いながら、無意識のうちに批判をされないような紋切り型の言葉しか発しないことの暴力性を改めて認識させられた。(「反〈絆〉論」 中島義道。ちくま新書)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )