goo

博物館のファントム 伊与原新

博物館のバックヤードに寝泊まりして研究に明け暮れる博物学者と博物館の展示や資料保存のアルゴリズム開発を担うプログラマーという分野も立ち位置も全く違う2人がコンビを組んで博物館で起きる色々な事件を解決していくミステリー短編集。各短編に、宮沢賢治と博物学、エドガーアランポーの貝類辞典、生物の学名を使った暗号など自然分野の研究や博物館に関する蘊蓄があふれていて楽しい。登場人物も様々な研究分野の専門家、博物館の案内ボランテイア、在野のアマチュア研究家、生物の標本剥製を作る人、博物館に希少な標本を納入する専門業者など多彩だ。本書については、こうしたエンターテイメントの要素だけでなく、細分化してしまった博物学に抗う博物学者と博物学に新たな視点を加える可能性を秘めたプログラマーという主人公2人が著者自身が考える今後の博物学のあるべき姿を体現しているようで考えさせられた。(「博物館のファントム」 伊与原新、集英社文庫)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )