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とんこつQ&A 今村夏子

著者の本は2冊目。書評誌に「待望の新作」と紹介されていたので読んでみた。前に読んだ作品は話の展開の面白さとか結末の意外性などではなくそこに書かれた人物の心の綾のようなものに焦点が当てられた作品だった記憶があるが、本作も何か不穏な人々の心境や行動が丹念に描かれた短編集だ。無邪気さが度を越していて逆に怪しい人、倫理的規範を大切にしているように見えてどこか道を踏み外しているようにしか見えない夫婦など、他人の内面を正しく理解することが想像以上に難しいということを教えてくれる作品が並んでいる。表題作の終盤に何気なく書かれた10桁の数字を見たときは、「えぇ?」という驚きと共に、こんなところにこんな仕掛けをする心底怖い作家だなぁと感じた。(「とんこつQ&A」 今村夏子、講談社)
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