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日本百名虫 フォトジェニックな虫たち 坂爪真吾
買った時には気づかず本書しか買わなかったが、上下2冊でワンセットの本だった。内容は、日本のすごい虫100種をマクロ写真と軽妙な語りで解説してくれる図鑑とエッセイの中間のようなもので、本書では主に100種のうちの甲虫を中心とした50種が掲げられている。副題は「フォトジェニックな虫たち」。著者が100種を選定する基準は、歴史のある虫であること、個性的な特徴を有していること、日本で採取が可能であることの3点とのことだが、採取可能という基準のため、採取が禁止されている天然記念物の虫とか種の保存法の対象になっている希少種は除外されている。素人的にはそうした珍しい虫も見てみたいので、少し残念な気もしたが、そうした虫を取り上げると、心ない採取コレクターによる悪影響が懸念されることへの配慮だと分かって納得した。本書で最初に取り上げられた「カゲロウ」の項を読んでまず愕然。カゲロウの成虫の生存期間は1〜2時間だそうで、メスは羽化した後そのまま空中に舞い上がり、その後地面に着いたところで死ぬそうで、そのため必要のない脚は退化してしまっているとのこと。全く知らなかった。全編を通じて虫好きのあるあるが満載で、彼ら独特の来歴、生態、形態の見どころに対する感性とこだわりがとにかく面白い。形態でいえば、色、輝き、ほどほどのサイズが大切だとか、種類の少ない方がコンプリートできそうなので人気があるとか、クマゼミの項では最近のセミ食ブームをうっすら心配したりとか、カエデの木は色々な虫が集まる集虫力がすごいとか。また、虫を採取する方法が色々紹介されていて、ベテランに同行して採取する大名採集、ふんどしトラップ、羽毛トラップ、セルフトラップなど、めちゃくちゃ面白い。上巻の本書は比較的地味な甲虫中心だが、下巻では蝶々なども取り上げられているようで、読むのが楽しみだ。(「日本百名虫 フォトジェニックな虫たち」 坂爪真吾、文春新書)
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