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マッカラーズ短編集 カーソン・マッカラーズ

アメリカ南部ジョージア州出身で20世紀中葉に活躍した夭折の女性作家の短編集。アメリカでは有名な作家のようだが、彼女の作品を読むのは初めて。描かれているのはアメリカ社会の中で生きるかなり変わった人々の日常や言動なのだが、読んでいると何故かアメリカに滞在していた頃に出会ったアメリカの人々のことが色々思い出されて、皆ここまで奇妙ではないが同じような雰囲気を漂わせた人がいたなぁと、懐かしいような奇妙な感覚を覚えた。ルーツも歩んできた道も全く違う人々が共存するためのある意味突き放したような個人主義、それに抗うように頑なに自己保身とエゴを纏った差別意識、激しい競争社会の中でもがくうちに疲れたり傷ついてしまったりしている人々。これらの容赦ない描写が、それをわが身になぞらえるアメリカ人の心に強く響くのだろう。健康で陽気でたくましく前向きなカウボーイのようなアメリカのイメージと対極にある、常に何かに追い立てられるような沈鬱な社会の断面を見せてくれる、とてもアメリカらしい一冊だと感じた。(「マッカラーズ短編集」 カーソン・マッカラーズ、ちくま文庫)
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