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ある実験 両角長彦

横浜の大型書店で書店員推薦という感じで置かれていた一冊。巻末を見ると、2年前に刊行された文庫書き下ろし作品とあるが、新聞広告や書評誌で見た記憶が全くないので、あまり宣伝もされず大きな話題にもならなかったのだと思う。話は、20年前にある大学教授が学生相手に行なった心理実験のようなものと関係があるらしい殺人事件と誘拐事件を扱ったかなり奇妙なミステリーで、当時の学生の一人がその実験がどのようなものだったのかを語るパーツとその実験の模様の描写で成り立っている。大昔の一見たわいも無い実験と現在の事件にどのような関係があるのか徐々に明らかになっていく展開はスリリングだし、最後の結末もかなり衝撃的、更に今の学生たちが就活に神経をすり減らされているという厳しい状況や人が人を選別したり順位付けしたりすることへの疑問といった社会問題も織り込まれたストーリーを堪能した。(「ある実験ー一人選べと先生が言った」 両角長彦、徳間文庫)
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