明治元勲でもっとも評判の悪い人物は大久保利通であろう。何故大久保を悪い奴だと思ったのか、とその根拠をずっと考えていたら、最近やっと思いあたった。それは松本清張の『西郷札』のなかにある「梟示抄」という小説だった。
小説の筋立ては、佐賀の乱で捕まった元司法卿の江藤新平をかつての部下である河野敏鎌に裁かせて、梟首刑に処したことだ。
江藤新平は五稜郭で生き残った榎本武揚を思い、まさか自分が死刑になると思っていなかったのではないか。ましてや近代国家となった明治政府で江戸時代の残酷刑の梟首が適用されるとは思わなかったに違いない。
明治の近代司法体系の基を創った江藤にあえて旧法の残酷刑を見せしめとして執行した。当時、行政の実務能力では江藤は大久保を凌いでいたと評価されていた。権力者大久保の江藤への異常なまでの嫉妬を感じる。
サッチャーナライ遺跡・タイ