玄冬時代

日常の中で思いつくことを気の向くままに書いてみました。

『開戦神話―対米通告を遅らせたのは誰か』(後)

2022-07-26 10:30:33 | 

味気ない無味乾燥な抑留生活にも若い者には花があったらしい。

真珠湾攻撃によって、一夜にしてアメリカにいる日本人は抑留生活を送ることになる。

筆者の井口武夫は11歳、通っている学校にはベティという初恋の女の子がいて、クリスマス・イブには告白をする段取りになっていたそうだが、戦争によって初恋は潰えることになる。

戦争が終わって、井口はその女性を探したそうだが、全く消息は分からなかった。だが、マリコ・テラサキには晩年に会えた。その時にベティの事を話すと、マリコも日本へ帰る浅間丸で一緒に帰った本城文彦への淡い愛があったと告白されたそうである。

本城はハーバート大学に留学中に強制送還となり、浅間丸では子供たちの教育の面倒を見ていた。その本城は後に東郷茂徳の娘いせと結婚して婿となり、東郷文彦と名乗り、戦後、外務事務次官、駐米大使を勤めたそうである。

話は外交官の世界という随分と小さな世界に凝縮されてしまう。

かくいう私は、この本を読むきっかけは、実は東郷茂徳『時代の一面』での東郷が何を弁明しているかを調べていた。

真珠湾攻撃が奇襲と意図されたモノか、大使館の事務的なミスの結果の奇襲なのか、それを見極める中に当時大使館に居た井口貞夫参事官の存在が浮き上がぅた。

その息子である井口武夫が父親の汚名を晴らす意図をもって書いた本として、今読んでいるのである。

こういうのを相関図と云うのか、いや、本の旅と云うのだろう。

 


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