キキ便り

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自閉症者が仕事で成功するためには:Temple Grandinの本から考える

2009-01-28 04:14:23 | 自閉症アメリカ教育事情
息子のカウンセラーに勧められて、Temple Grandinが共著で2004に出版したDeveloping Talents: Careers for Individuals with Asperger Syndrome and High-Functioning Autismを読んでみる。

調べてみたところ、すでに和訳も出ており、「アスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワーク―能力を伸ばし最適の仕事を見つけるための職業ガイダンス」というタイトルになって紹介されている。

Temple Grandinとは、アメリカでは自閉症者でも最も成功し活躍しているといってもいいくらい有名な人。自身の体験をもとに、本を何冊も書き、講演も精力的にこなす。私は彼女の講演をテープで1回、生で1回聴いたことがあるが、素朴な語り口の中で、周りの人を引き付ける何かを持っているというのが感想。

今回読みながら感動したのは、ここまで登りつめるまでに、非常に苦労をなさった方で、ご自身の失敗体験を武器にしながら、人との付き合い方のノウハウを効果的に伝授しようとするその前向きな姿勢。

たとえば、感情のコントロールの難しい自閉症者にとっては、職場で「怒り」を表して首になるよりは、泣いた方が得だということや、難しいボスや同僚との付き合い方、自分の売り込み方などが、具体例とともにわかりやすく紹介されている。

強調されていたのは、自閉症者が職を手に入れるのに武器になるのはパーソナリティではなく、「スキル」(能力)だということをわきまえ、社会性が欠けている分、非常に際立った能力の持ち主であることを証明しなければならないという点。そのためには、社会に出る前の学校教育の中で、特に自分の興味を持つ分野を徹底的に探求したり勉強する経験を持つこと、お手伝いやアルバイトなどで働く経験を持つことなどを提案している。

同感したのは、自閉症者にとってコンピューターゲームは、害あっても益なしのことが多く、中毒になりやすいという点。バトルなどのゲームじゃなく、専門家が仕事で用いるようなで少し値のはるようなソフトを購入して探究心を満足させてはという提案。

自閉症者でなくとも、役立つこの職業訓練の本。息子と一緒に、何度も読み返していきたい。
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