ふぶきの部屋

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熱海五郎一座 Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー

2021-06-10 07:00:00 | ヅカOG その他舞台

姫ちゃんと一緒に新橋演舞場まで行って来ました。

本来であれば去年、上演される筈だった公演です。

せっかくいい席をとっていたのに見ることが出来ず、本当に残念でした。

今回も新橋演舞場としては客数は50%で、花道では歩くだけ許可という制限された公演になりました。

私達は2階席だったのですが、平日だったという事もあるし、50%に制限されているという事もあるし、結構客席が閑散としていた印象です。

「熱海五郎一座」についてはWOWOWでしか過去の作品を見たことがなく、今回が初めての生観劇でした。

タイトルの「Jazzyなさくらが裏切りのハーモニー」(日米爆笑保障条約)

が何とも不可思議というか、しかもポスターを見ると軍服姿の紅ゆずる?で、頭の中がわけわかめだったんですが、芝居を見てなるほどと思った一方で

「だからといってこれをコメディにしてよかったのか」という疑問が頭をもたげ、笑えなくなりました。

ここからはネタバレです。これから見る人は気をつけて

 1場・・南方と思われる戦場で日本兵が疲弊している所にラジオで「ニューヨークのさくら」の言葉が流れる。「アメリカに投降すればパラダイスよ」

 2場から・・日系2世達がジャズ演奏をしている。彼らは日系2世で本来収容所行きなのだが、ジャズを演奏してアメリカ軍に貢献している為、収容所行を免れている。ドラマーのアキバの妹が実はニューヨークのさくらである。

 突如ラジオからトルーマン大統領の放送が流れてきて、「アメリカが日本に負けた。今後は東側をドイツが、西側を日本が占領する」ことになる。

 飛行場からマッカーサーもどきの松笠司令官が降り立ち、元星久美という白軍服の日本人作戦本部長がやって来る。

 以後、英語は禁止。カタカナを日本語に言い換えたり、ジャズバンドなのに演歌を演奏させたりという「日本文化の強制」が行われる

 実は元星はアメリカ側の2重スパイで、最初はドイツの総統を殺す計画をし、その後は日本軍に偵察に入り、アメリカ側に情報を売っていた。しかしそのアメリカにも捨てられてしまう。

 本当は日本は負け続けの戦争で沖縄戦の時に、日本政府は日本を守ることよりもアメリカの西海岸だけを占領し、「日本が勝った」とプロパガンダ政策を行っていただった。

 やがて日本はポツダム宣言を受け入れて日本とアメリカが仲良しになりました。その象徴としてジャズ演奏で幕

・・・・というお話なのです。

紅ゆずるの役はいわずとしれた元星久美で、白軍服で颯爽と登場し2幕目では赤い男役パンツスタイルからドレスまで披露。

歌って踊ってキザっての大活躍に新たなファンを産んだかしら?と思う程。

「ニューヨークのさくら」役のAKBの横山由依は一生懸命に覚えたドラムが清々しく、またセリフ回しもよく可愛らしくて紅の横にいるのが似合う子です。

それぞれがみんなピンで活躍できる役者さんをまとめて、本人達の持ち味をだしつつストーリーに組み込んでいくという作業はものすごく大変だったろうと思います。

脚本家としては「こういう話を作りたい」と思っても、役者が「これをやりたい」と言ったらそれを優先せざるを得ず、特にゲストだった紅ゆずるは男役だった頃のかっこよさと、踊りや歌を存分に見せてラストはドレス姿で華やかに・・という条件がついていたろうということで、2幕目には必要あるとは思えないけど、すごい立ち回りすらあったのです。

紅ファンなら泣いて喜ぶ場面満載で、私も途中までは「?」と思いつつも、げらげら笑っていました。

しかし!2幕目の紅の身元がばれて立ち回りが始まったあたりから、私は笑えなくなってだんだん怒りがわいて来たんですね。

「こんな脚本を1年も寝かせて改訂もせず上演したのか」と。

それというのも、紅が2幕で告白した言葉「アメリカのよさをわかって貰いたくて」にカチンと来たのです。

時は1945年なんです。(日本人なら1945年とはいいません。昭和20年というんですけど、この作家はそれすらわからないようで)

元星組はアメリカ留学していた時にアメリカが好きになって、わざわざ日本軍で重用されるように頑張って地位を得てアメリカ側のスパイになったと言います。それもこれも「アメリカのよさをわかって貰いたくて」という熱意で。

アメリカのよさ・・・といっても出てくるのはハンバーガーとフライドポテトとコカ・コーラ、そしてジャズの演奏なんですが。

芝居が始まった時は「日本が勝ってアメリカが負けた」という設定も、まあ面白いんだろうと思いました。

そういうのもありかなと。

でも、日系2世の彼らが自慢げに「だから俺達は収容所に行かない」と言った事にもちょいカチンとしたんですね。

彼らはアメリカ国籍でジャズが大好き。ハンバーガーとコカ・コーラが大好き。アメリカ文化に心酔している。

そんな彼らがいきなり「全部日本語で話せ」とか「英語禁止」とか「演歌を演奏しろ」と強制されるという設定が・・なんていうか、かの国を想像させて笑っていいのかどうなのか?と思う部分も多いのですが、その悪役が他ならぬ「日本」であることに非常に腹が立ったのです。

 

多分、この脚本を書いた吉高久男という人は私などよりかなり若いのでしょう。

彼の歴史観は

 日本は悪の枢軸国だった

 日本は中国や朝鮮半島を植民地として支配し、日本文化を強制した

 日本軍は卑怯で意味もなく現地の人達を殺した

っていうものじゃないかなと思います。

そもそも演劇界そのものが左翼ですし、戦前の日本をよい国だったというと、かなりお叱りを受ける組織でもあります。

日独が協定を結んでいたからと、ナチと同じように日本軍をとらえるあたりが本当に無知すぎて笑えないのです。

 「山河燃ゆ」と「あめりか物語」を読め

私が小さかった時、大河ドラマで「山河燃ゆ」という作品をやっていました。原作は山崎豊子で「二つの祖国」です。

松本幸四郎が兄、西田敏行が弟。二人ともアメリカ移民の2世です。

戦争が始まって収容所送りになった時、兄は得意な日本語を使ってアメリカ軍に従軍しやがて日本の暗号解読などの仕事をして、戦後は進駐軍のメンバーとして日本に来ます。

弟は日本に留学し父方の実家で過ごしている間に戦争が始まって、アメリカに帰ることが出来ずそのまま日本軍に徴兵され南方戦線に送られます。

兄と弟は敵同士になってフィリピンで再会するのです。

弟は戦後、商売人となり兄はそのまま米軍にいますが、東京裁判が始まり、そのあまりの理不尽さに彼は自殺してしまうのです。

最も愛した女性が、被爆後の広島に足を踏み入れたばかりに原爆症で亡くなった事も大きな原因でした。

兄も弟も「自分はアメリカ人なのか日本人なのか」と悩みます。両親は立派な日本人で日本文化を誇りに思っている。2世はアメリカではジャップと言われ、日本では「お前はアメリカ人だ」と言われる。

芝居に書かれているような簡単にアメリカ人になった2世なんていないのです。

山田太一の「あめりか物語」は脚本で売っています。当時、ドラマで見たし脚本も買いました。

また、NHKのドラマで「マリコ」というのがありました。

アメリカ人と結婚して娘を「ブリッジ」(架け橋」と呼び、日米双方を愛する外交官が、戦後は妻と娘をアメリカに返し自分は一人日本で死んでいく話です。これは実話です。

つまり、「日系人」問題は非常にセンシティブなもので、軽く扱ってはいけない題材なのです。

「日系2世だからアメリカが好き、ジャズが好き」っていうのは平和な時は許されるけど戦争中に両親の母国をあっさり捨てるような事を出来るか?っていうすごい問題なのです。

 アメリカ音楽はジャズ?日本音楽は演歌?

ジャズは比較的新しいんじゃないかと。

戦前に演歌はないですし。なぜ軍歌を使わなかったかわかりませんが、本当にプロパガンダとして使うなら軍歌をコメディ化した方が受けたかもしれない。

 日本が他国に自国文化を強制することはない

多分、この脚本家は韓国人のいう「私達は言葉を奪われ名前を奪われ・・」と信じているのかもしれないし、満州帝国に置いて中国文化を無視したと考えているのかもしれませんがそれは大きな間違いです。

イギリスやフランスがそれぞれの植民地に対して行ったような「強制」は日本では存在しません。確かに満州映画は日本の国策映画だったけど「強制」とは遥か遠い代物です。

戦前の日本映画を見てみれば日本人がどれほど南方に憧れ、満州や朝鮮を愛していたかわかります。

 

ちゃんと歴史をわかった上で「笑い話」にするのと、単純に聞きかじりで面白そうだから・・・と笑い話にするのでは大違いです。

日本人にとって昭和20年というのがいかに大事で大きな節目の時だったか。どんなに笑い話にしようとしても「沖縄戦」の後には原爆が待ち受けていると観客は全員知っているのです。

沖縄戦で負けた日本が西海岸を占領した~~というセリフは笑うと言うより、ドキっとしてその瞬間から顔がこわばってしまう程のことなんですよ。

 ニューヨークのさくらと東京ローズ

多分、「ニューヨークのさくら」は東京ローズの事だろうと思いますが。

複数いたようです。その一人は日系2世で日本にいる間に戦争が起きてアメリカに帰ることが出来なくなり。その英語力を軍が利用したものと思います。

生きる為に自分が最も愛するアメリカを裏切らないといけない立場は、考えてみただけでぞっとします。

紅ゆずるが演じた元星久美は日本人でアメリカ文化を愛したけれど、日本人としてのプライドはなかったようで。

 

吉高久男氏は2014年から「熱海五郎一座」の脚本を手掛けているようですが、やたら暗転が多い演出と、ぶちっとセリフが途切れる場面展開などプロとは思えない脚本だなと思いました。

せっかく盆が回ってセリがあるのに(予算上使用には制限があったのかもしれませんが)うまく使っていないし、2つ3つ場面をくっつける事も可能で、1時間半くらいの芝居に収められたのではないかと。

残った時間をショーにしちゃった方がよかったんじゃないかと。

カーテンコールの時に三宅裕司一同が「今日はお客さんのノリがよくて、笑って欲しい所で笑って貰えたからテンションが上がった」というような事を言ってました。

へえ・・・って思ったけど、新橋演舞場のお客は高齢者が多いという事を考えると、内容的にはとても笑える作品ではなかったろうなと思います。

たまたま横山由依とか紅ゆずるの若いファンが多くて、あまり歴史を知らないから笑えたのか?とも思い。

とにかく太平洋戦争で笑いをとるという無謀な真似は止めた方がいいです。

三谷幸喜の「笑の大学」のような作品だったら歓迎するけど。

あれでは頑張ってる出演者が可哀想です。

衣装にしても、松笠司令官の衣装は明治時代の軍人みたいだったしなあ。

あ、もう一つ笑えない場面があった。

追われた元星久美がコリアンタウンの朝鮮人と衣装を取り替えて、日本軍に捕まった朝鮮人が喋るシーン。実は広東語なのです。

セリフでは「喋ってるのは中国語だよ」ってあるけど、厳密にいうと中国語と広東語では全然違うんです。

さらに紅がチマチョゴリを着て出てくるっていうのも、サービス精神かもしれないけどズレてるよな~~と。

多分、こんな感想を書いたのは私ひとりでしょう。

ツイッターでも称賛の嵐ですし。

出演者が「いいコメントを下さい。批判などは削除する事もあります」とか言ってたけど(アンケート用紙でね)とても称賛出来ない芝居でした。

五輪衣装の件もそうですが、日本人が日本の歴史を知らなすぎるのはかなり問題です。

母国を愛せない人は不幸です。

演劇業界の左翼主義もなんとか常識的に改まって欲しいと思います。

 

 

コメント (2)
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