見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず
歌意: 血の涙で変わってしまった私の袖をお見せしたいものです。
松島の雄島の漁師の袖でさえ、波に洗われて濡れに濡れてしまいました。
色は変わりませんのに。
作者: 殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)
1131?~1200? 藤原信成の娘。後白河天皇の皇女・亮子内親王(殷富門院)に仕える。
『千載集』の詞書に、「歌合しはべりける時、恋の歌とて詠める」とある、題詠の歌である。
この歌は、源重之の「松島や雄島の磯にあさりせし あまの袖こそ かくはぬれしか」を、
本題として詠んだ、本歌取の歌である。
(本歌取とは、古い歌の表現の一部を意識的に取り入れて作歌する方法)
「松島の雄島の漁師の袖は、涙にひどく濡れた私の袖と同じようだ」という歌意を受けて、
「重之の袖は濡れただけだが、私の袖は濡れたうえに色まで変わってしまった」と詠んでいることになる。
深い悲しみの涙を「血涙」(紅涙)というのは、漢詩文の影響による誇張された表現である。
※参考 文英堂 「原色小倉百人一首」
百人一首の紹介も、あと10首。 稽古は今月100首達成しました~
拙い書ですが、最後までご覧いただけたらとても嬉しいです。
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