よし坊のあっちこっち

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ビン・ラーデン追跡の10年(1)CIAの失態 (Peter Bergenの本を読んで)

2012年07月02日 | アメリカ通信
9・11以前から、ビン・ラーデンのアルカイダはアメリカをターゲットにテロ活動を活発化しており、海外の米国資産(大使館)や軍船(USS COLE爆破事件)等へのテロ攻撃で、二期目のクリントン政権には頭の痛い問題となった。アメリカが抱える問題としてイラクの大量破壊兵器保有の問題もあったが、クリントン政権としては、テロ組織アルカイダがアフガンに拠点を移した事の方がより重大であり、アルカイダーアフガン問題の解決を優先していた節があるが、ブッシュ政権の誕生で大きく方向が変わってしまった。歴史にIFは許されないが、もし、政策変更が無ければ、9・11は起こらなかったかもしれない。

アメリカとその外交を語る場合、欠かせなのがインテリジェンスであり主役のCIAだろう。ビン・ラーデン追跡も実行の主役はCIAだ。9・11に関してCIAの実力が問題視されたが、その根は、レーガン時代の「イラン・コントラ事件」に遡る。この事件でダーティCIAとして徹底的に叩かれ、インテリジェンズの力が弱体化してしまった。

とは言っても、世界の警察官を自認するCIAがその後の仕事をサボっていたわけではない。世界中にモニターの網を張っていた。しかし、CIAもお役所である。ただでさえ役所は階級社会なのが、イランーコントラ事件以降、ますます柔軟さを欠き、一層身動きの取れない組織になっていったのかもしれない。

2001年、CIAは9・11を防げたかもしれない大きな、決定的とも言える失敗をしている。後に判明した事だが、ペンシルベニアに落ちた4機目のハイジャック機に乗っていた犯人グループの二人は、CIAが以前からマークしていた不審人物にもかかわらず、FBIへの伝達を怠った為、空港には情報が行かず、実名での入国をまんまと許してしまった。9・11発生の数ヶ月前の事である。この時点で捕捉出来ていれば、違った展開になったかも知れないのだ。CIAは後にこの失態を「官僚組織の、より硬直化」が原因と自己分析している。

こうして、彼らは当局の網の目をすり抜け、ワールドトレードセンタービルを崩壊させた。