よし坊のあっちこっち

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ビン・ラーデン追跡の10年 (6)影の主役 (Peter Bergenの本を読んで)

2012年07月22日 | アメリカ通信
2011年、最早これ以上物証に近づける情報は取れない、と判断したCIAは1月に入ってオバマに進言する。「物証は無いが状況証拠及び心証はクロ。やるなら今しかない」。これを受けてオバマは建物攻略案の策定を指示する。大統領が軍事作戦への一歩を踏み出した瞬間である。
CIAとペンタゴンはここで密かにアフガニスタン駐在の海軍中将ウィリアム・マックレイブンを呼び作戦計画の立案を命じる。

アメリカの特殊部隊はいくつもあり、それぞれに強力である。陸軍のDelta Force、海軍のSEAL、その他グリーンベレー等。その中でも最強を誇るのがSEALであり、SEALの中のTeam6は”SEALの中のSEAL”と言われている。SEALに応募するうちの90%が途中で落伍していく。SEAL3000人のうち、SEAL6に抜擢されているのが250人。いかに厳しい関門をくぐって来ているかが分かる。
特殊部隊を組織横断的に束ねるのがJoint Special Operation Command、別名JSOCと言われる特殊作戦部隊統合司令部である。JSOCの誕生は1979年まで遡る。当時のカーター政権下でイラン革命によるアメリカ大使館での人質事件が発生、精鋭の各特殊部隊を動員しての救出作戦を敢行するが失敗してしまう。その原因のひとつが“縄張り争い”にあった。そこで翌80年に各特殊部隊を統括する本部としてJSOCを組織し、NCのFT.BRAGG基地に本部を置いた。しかし、このJSOCも最初から十分に機能したわけではない。最も機能的に動けるようになるまでには、イラク戦争と二つ星のスタンレー・マックリスタル(少将)の登場を待たねばならなかった。彼は2003年から2008年までの間にJSOCを劇的に変えていく。最新電子機器を駆使し、JSOC間だけでなく、ともすれば壁が出来てしまうCIAをも味方につけ、新しい全ての情報を世界のどこからも、24時間以内に共有できるような体制に作り上げた。

アボッタバードの不審住居攻略作戦の立案を任されたウィリアム・マックレイブンはSEALのTeam6出身にして、JSOCのリーダー経験者、かつ、イラク戦争では特殊部隊TF121を率い、サダム・フセインを探し出して捕捉したツワモノである。彼の元、SEALを中心とした作戦が立てられていくことになる。