よし坊のあっちこっち

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ルール主義のアメリカ、その極端な一面

2012年07月05日 | ビジネス横丁こぼれ話
今週の月曜日にフロリダで起こった事件が全国の衆目を集めている。

事の起こりは、フロリダのハランデール・ビーチという所で人が溺れかける事件が起こった。その時、ビーチの一角を安全警備で雇われた会社の救助員の一人が持ち場を離れて救助に向かった。幸いにして、溺れかけた人は病院に運ばれ一命を取り止めた。この救助員は事件の後、持ち場を離れたという理由で即日解雇されたのだ。

日本ではなかなか起こりにくい解雇の例であろう。ルール主義アメリカで起こりうる極端な一例かもしれない。我々日本人には理解し難いことだが、当のアメリカ人でも多くの人はやり過ぎと思っている。

解雇理由は契約にある「安全警備範囲を逸脱」したためとある。日本でも、ルールを逸脱した場合、何らかの処分をするとして、人命に関わる緊急事態での行動故、せいぜい「注意」くらいが適当であろう。とても「解雇」までいくような話ではあるまい。しかし、アメリカでは、こう言う事が起りがちである。

この解雇の後、会社の同僚数人が辞表を叩きつけて辞めたという話だ。彼らにとっては、この会社は「良い会社」ではないと、三行半を突きつけた訳である。ニュースが全国区になり、周辺が騒ぎ始めた為、この会社は”えらいこっちゃ”と汚名挽回すべく、よく調査して会社に誤りがあれば即刻正すし、辞めた人達に職場の再オファーをしたいと言い出している。しかし、それではもう遅いのだ。恐らく彼らは戻らない。会社の不誠実さだとか、よからぬ体質が見えたらアメリカ人は寄り付かない。

不祥事があると、確実に人材が流出していくのがアメリカである。だからアメリカのマネジメントは大変である。その点、日本では辞めても直ぐ転職出来る構造ではないから、簡単に人材流出には繋がらない。ここに日本の経営者が”高をくくる”背景がある。

ビン・ラーデン追跡の10年(1)CIAの失態 (Peter Bergenの本を読んで)

2012年07月02日 | アメリカ通信
9・11以前から、ビン・ラーデンのアルカイダはアメリカをターゲットにテロ活動を活発化しており、海外の米国資産(大使館)や軍船(USS COLE爆破事件)等へのテロ攻撃で、二期目のクリントン政権には頭の痛い問題となった。アメリカが抱える問題としてイラクの大量破壊兵器保有の問題もあったが、クリントン政権としては、テロ組織アルカイダがアフガンに拠点を移した事の方がより重大であり、アルカイダーアフガン問題の解決を優先していた節があるが、ブッシュ政権の誕生で大きく方向が変わってしまった。歴史にIFは許されないが、もし、政策変更が無ければ、9・11は起こらなかったかもしれない。

アメリカとその外交を語る場合、欠かせなのがインテリジェンスであり主役のCIAだろう。ビン・ラーデン追跡も実行の主役はCIAだ。9・11に関してCIAの実力が問題視されたが、その根は、レーガン時代の「イラン・コントラ事件」に遡る。この事件でダーティCIAとして徹底的に叩かれ、インテリジェンズの力が弱体化してしまった。

とは言っても、世界の警察官を自認するCIAがその後の仕事をサボっていたわけではない。世界中にモニターの網を張っていた。しかし、CIAもお役所である。ただでさえ役所は階級社会なのが、イランーコントラ事件以降、ますます柔軟さを欠き、一層身動きの取れない組織になっていったのかもしれない。

2001年、CIAは9・11を防げたかもしれない大きな、決定的とも言える失敗をしている。後に判明した事だが、ペンシルベニアに落ちた4機目のハイジャック機に乗っていた犯人グループの二人は、CIAが以前からマークしていた不審人物にもかかわらず、FBIへの伝達を怠った為、空港には情報が行かず、実名での入国をまんまと許してしまった。9・11発生の数ヶ月前の事である。この時点で捕捉出来ていれば、違った展開になったかも知れないのだ。CIAは後にこの失態を「官僚組織の、より硬直化」が原因と自己分析している。

こうして、彼らは当局の網の目をすり抜け、ワールドトレードセンタービルを崩壊させた。