2012年3月16日 吉本隆明さんが亡くなられました。87歳。
私は吉本さんの著作を生活や思考の羅針盤にしてきただけに、辛いです。
この「日本語のゆくえ」は東工大の学生に語った主に詩とコトバについての連続講演記録ですが、平易で、しかも十分に準備された充実した内容です。ほんの一部を引用します。
「ぼくが長いあいだ疑問に思っていたのは、幕末から明治維新にかけて、どうして本居宣長などの国学系統の思想が維新の原動力になったのかということでした。なぜ『尊王攘夷』のような古い思想が主体になって日本の近代革命がはじまったのか、そのあたりの意味がどうもわからなかった。」
こういう問いを発した人は、寡聞にして聞いたことがありません。
原発事故に関連し、危険だからといって、科学技術を否定することは、人間が猿になることだ、と言って物議を醸しましたが、状況に左右されずに、現在の課題を常に掘り起こしながら、本源的なところから問題を提出する力業にはいつも勇気づけられてきました。
これからは吉本隆明という羅針盤がない航海に出なくてはなりません。
同じ訃報で「原発安全革命」を残した科学者の古川和男さんも昨年12月14日に亡くなられました。ウラン型の原子力発電の問題点を指摘しながら、《トリウム原発=溶融塩炉》の安全性、利便性を追求してきた原子力科学者です。吉本さんと同様、全世界でも屈指の人でした。 [彬]