深夜の大型トラック(淀橋青果市場前)
東京都新宿区・淀橋青果市場には深夜に遠く東北各県から青果が搬入されてきます。
15トン級の大型車が、数珠つなぎで狭い道路に侵入、荷を下ろし一日7~800トンの取引がされるそうです。市場は朝の6時から。その前に搬入を終えるのですが、これが深夜の作業になります。道路を占拠する大型車は近隣の迷惑になりますが、これを誘導する係員は「ご迷惑をおかけして、すみません」とお詫びする深夜労働。場内も寝ずの作業が続きます。近代都市の胃袋を支える圧倒的な様相を、メガロポリスの象徴として驚嘆すべきか。
東京にはこのほか、巨大な太田市場をはじめ豊島、足立、板橋、世田谷など大きな青果市場がいくつも開設されています。
市場は元来交通の要衝地に開設されるものでした。各地に残る「いち」という地名がその名残ですが、都市が圧倒的な消費地になるに従い、「いち」は消費地の気ままな欲望に集約された形で、今日の大市場となっています。そして、この市場のあり方が、今日の農業、農村の存立の基盤を制約していることは誰の目のも明らか。
考えるに、消費地市場ではなく、生産地市場の形成は不可能なのでしょうか。
消費地の動向より、生産地の植え付けや作況状況を中心に市場動向が左右される仕組みである。そうすれば、ややもすると豊作貧乏に陥るかのような価格構成がもっと安定的に推移するのではないだろうか。漁業関係は、ずっと生産地(水揚げ地)市場になっています。
生鮮品の流通では、廃れ気味な仲買制度の充実が欠かせないと思います。産地直送・直売などという生半可なやり方で産地と消費地を繋ぐのではなく、品質の見極めが的確な仲買人を仲介し、効率的で、生産性のある現代的な流通の仕組みがきっとあるのではないだろうか。
東京の市場での、深夜労働などといった過酷な業務も、偏った物流の形がもたらす遺物と思うのですがいかがでしょうか。【彬】