常磐道を北上するとやがて連なった山々の山腹や頂上に、巨大な高圧送電線が見えてくる。東京電力・広野発電所から首都圏に送られる送電線である。おそらく福島原発からの電力もここを通ったかもしれない。
JR中央線から分かれて青梅線に乗っていると、やがて川向うの山頂に送電用の巨大な鉄塔が敷設されているのが眼に入る。これはどこからどこに繋がっているものやら。
新宿からの小田急線・柿生付近は住宅街の周辺に鉄塔がいくつも建って、町を覆っている。
こうした自然を圧する光景は現代文明の偉容な姿なのか、あるいは異様な姿なのか。
電力は安価で豊富に使えた方がよいに決まっている。が、こうした光景を目にするとどこかに矛盾があるようで心地が悪い。最近、よく言われる《地産地消》というのは電力こそ当てはめたいものだ。
原子力にせよ、火力にせよ、発電工程には大量の冷却水が不可欠だそうで、従って、東京電力の火力発電所は房総半島から、川崎、横浜と湾岸に沿って建設されている。
とはいえ、余熱は別な形で利用できないのだろうか。冷却水が不要になれば、内陸でも発電所の建設ができ、送電線も短くて、結果的に高圧である必要がなくなる。それこそ安全だ。
そんな夢物語を描いてみる。もちろん、技術者たちはとっくの昔から、取り組んでいる課題だと思うが。【彬】