早起きの効能(2)
除雪車が、冬仕事の締めくくりとして切り開いた山道の散歩も回数を重ねると、マンサクの花は満開。
そして、急斜面の雪が早く消え、周囲よりいち早く地面の出たところには、ショウジョウバカマ、
そしてカタクリのつぼみも姿を見せ始める。
時には幸運に恵まれ、水を被るほどの川の近くで、フキノトウを見つける事もある。
それは長い間、雪の下で暮らす雪国の人々には心を躍らす喜びなのだ。
ポケットに入れて持ち帰ったフキノトウは朝の味噌汁に散らす。味噌汁から春の香りが食堂に立ち込める。
ある日のこと、いつもより少し足を伸ばし、山道のほぼ頂点まで登り、早春の空気を思い切り吸い込んで、
下り始めた。下り坂を犬のマックスに引っ張られ、天を仰ぐ加減にだくだくと歩く。
山道からもう少しで平地に着くと言う直前、目の前数十メートル前方の左側斜面から、
一頭のカモシカが道に飛び降り、そして右側の雪の上に消えた。一瞬の事でマックスさえ気付かない。
しかしマックスはその場所に着くと、不思議そうに匂いを嗅ぎ、周りの様子を見回していた。
近年近くの山に一頭のカモシカが住み着き、昨年は私も独活採りの最中、数メートルという至近距離で遭遇はしていた。
しかし道路に飛び出すと言う事態には驚いた。
どうやら昨年出会ったカモシカとも、毛艶などからも違うような気がする。
年々人里近くに移動しているのであろう。少し前までは奥山でしか、それもめったにお目にかかれなかったカモシカに、
散歩の途中いとも簡単に逢ってしまうことは、不思議な気持ちがする。
これも早起きの効能だったと言えるのかも知れない。
まだ散歩の途中カモシカに会った話など誰からも聞いた事も無いのだから。
しかし、こうして人里離れた奥山に生息していた動物が、人家近くまで生息域を拡げてきたのは、
野性動物との共存を喜ぶべき事なのか、本当の自然が無くなってきていると、悲しむべき事なのか、
複雑な思いをしている。
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