![]() | 三鬼 三島屋変調百物語四之続 |
宮部 みゆき | |
日本経済新聞出版社 |
幼馴染の男により許婚者が殺されて心に深い傷を負ったおちかは生家を離れ 江戸の親戚の三島屋で暮らしている
三島屋主人の発案で おちかは変わった話の聞き手を務めるようになっている
黒白の間で隣室に魔除けとなるお勝に居てもらって
「迷いの旅籠」
黒白の間を訪れたのは少女おつぎ
彼女は亡者を見たと言う
ささやかな祭りは子供を亡くした大名により禁じられた
滞在中の絵師が提案した代わりとなるもの
絵師は実は死んだ妻子をこの世に呼び戻したかった
おつぎの兄は好きな娘に死なれていて
この世とあちらの世を繋ぐ場所となったその建物を失くすることに反対ししてはならないことをした
死んでしまった相手を取り戻したい
なんとしても
この世の条理に逆らってでも
いっそ自分もあちらへ行って一緒になりたい
戒め・・・
三島屋の人間は心が温かく優しい
「食客ひだる神」
とても美味しい弁当屋さんなのに一年中は仕事をしないお店がある
その主人はひだる神に憑かれていたのだと話す
飢えて死んで・・・食べることに執着するモノ
だがー長い年月が過ぎて店の主人が帰郷した時に ソレはいなくなってしまった
怪異のモノなのに ソレがいなくなった主人は寂しく ソレと再会したさにある決断をした
「三鬼」
お取り潰しにあった藩の江戸家老だった男が語った話はー
少し耳が聞こえにくく体が大きいことから陰口を叩かれていた妹が男達にさらわれてー乱暴され酷い事には背中に牛女と彫られた傷まで負わされた
貧乏藩で貧しくても真面目に生きてきた男だったが妹のあった理不尽に復讐の念に燃えて もはや家名は断絶しても良いと思い詰めて遂に妹を嬲り者にした男達を見つける
三人を相手にの果し合い 主犯格は打ち果たしたが残り2名は逃げた
男は道場の師範代をつとめたこともあり腕に覚えはあったのだ
道場主は逃げた相手を追うことを止めた
切腹も覚悟した男だが 役人として山に入ることになる
その以前の職にあった者は一人は行方知れず いま一人は気が触れていた
鬼を見たのだとか
喧嘩を咎められた鉄砲撃ちのうまい武士と共に 両名とも3年我慢すれば家名再興を約束される
その山にある村は貧しく 不思議なことには赤ん坊も老人もいなかった
前任者のつけていたはずの日誌も見当たらない
日々の暮らしの過酷さは・・・謎の存在「鬼」を生んだ
男も遂に鬼を見る
雪に埋もれて死にかけた男を救ったのは 祈りをこめて妹が渡してくれたお守り
恐ろしくも不思議な体験をした男ともう一人の武士は友となり やがてその武士は男の妹を妻とした
おちかに鬼について語った男は 後日ー切腹した
見事に生きた男は 見事に死んだのだ
「おくらさま」
不意に現れた老女は語り終えると不意に消えた
事故から三島屋に戻ってきた次男坊のイトコと共に おちかは老女の身の上を調べる
老女お梅は実在していた
その家にあった言い伝え
家を守るといわれた存在
だがそれは姉のお菊を連れていってしまった
しきたりを破り火事で一夜で滅んだ家
静かにおちかは恋をしていたが 慕う相手は育った場所へ帰り妻帯することとなる
切ない終わり
けれどお勝によれば おちかの縁ある相手は他にいるそうな
長くシリーズが続くうち人間関係にも変化が見られます
数年前 波瑠さん主演でNHKでドラマ化もされております