船を逃げ出し言葉の分からない身で安全な場所を求めて・・・・・屋根のあるところー紛れ込んでも人目につきにくい出入りがある・・・
怯えながらファナクはそうした場所を何故か城に定めた
お城なら人の出入りがあるし食べ物もあるはず
父親が攻めようとした国の城が何故か安全な場所に思えた
それほど気持ちがはっきりしている時には将軍リシュウライが恐ろしかった
自分を見るリシュウライのギラギラした眼
人を操るようなところがある
ファナクも自分が思うと異なる言動をとっていることに 意識がはっきりしている時には気づくことがあった
ひどくぼんやりした気分になり 行こうなどと思っていないレイダンドとの戦いについてきてしまっていた
父親の皇帝コキンタクの言動もどこかおかしい
自分が男達に与えられようとしていると知ってファナクは恐怖と嫌悪から逃げ出した
ぼろ布で全身を包み姿を隠して人々に紛れ込み どうにか食べ物のある場所を見つけると 隠れ場所を捜して昼間はじっと潜んでいるようにした
鼠にでもなったような気分だったが仕方がない
空腹は耐え難かった
それに何処かに行くのは それはそれで恐ろしい
数夜 過ごして とうとう見つかってしまった
異国の若い男達につかまり暴れたけれどー
ファナクのような娘が暴れても若い男二人は笑うばかり
相手にもしていなかった
「ほら 言葉が分かるかもしれない人間の所へ連れていくから」
「何かしようとするんじゃない じっとしてろ」
意味は分からなかったが 声の穏やかさはファナクを少しだけ安心させた
それでも恐ろしかったけれど
連れていかれた部屋で見たのは くるくる金の巻き毛が乱れて額に落ちる若者が寝台から起き上がりかけている姿
すぐに力なくクッションにもたれかかったけれど
泣いている不思議な髪の色の娘
その娘はかいがいしく寝台にいる若者の世話をしていた
ファナクを捕まえた男二人と話していたその若者は ファナクに眼をむけると
「こんな格好で失礼ー」とファナクの国の言葉で言った
「通じてますか? 僕の育った領域では貴女の国の言葉も覚えるんです
今 ちょっと僕は弱っていますが・・・ああ そうだ自己紹介が先ですね
僕はベルナー
僕を看病してくれていた優しい女性はこの城の女官のロズモンド
貴女を見つけたのはブロディルの王子のリトアール様とダンスタン様
ああ この国の言葉が分かるように話せるようにしてほしいですか」
ベルナーと名乗る若者はとても優しい笑みを浮かべる
少し窶れているが とても美しい若者だった
ひどく豪華な金の髪 海のような色の瞳 整った顔立ちの
「あ・・・ファナク・・乗って来た船に居られなくなって逃げてきた
言葉が分かるようになれたら有難い
御願いする」
「じゃ ちょっとだけ魔法を使いますよ
暫くは保(も)つはずです」
ベルナーはファナクに向けて指を振った
ベルナーはファナク以外の人間に向けて言った「アクシナティの船に居られなくなり逃げてきたーと話しています
名前はファナク 今 こちらの言葉が使えるようになる その場しのぎの術をかけました」
「死にかけたばかりなのよ もう使っても大丈夫なの」
心配そうなロズモンド
ロズモンドの指に手を添え微笑んで見上げるベルナー「有難う ずっと声が聞こえてた 君の声が僕を戻した
君のおかげだー
こういう小さなモノなら大丈夫
甘い飲み物かスープかもらえる
そうしたら もっと元気になれそうだ」
頷くと涙を指で拭いながらロズモンドは部屋を出て行く
「ああ 僕が一緒に行こう」とダンスタン
夜中など王様や姫君達がちょっとしたものを欲しがった時用の小さな台所が階段の反対側にある
ロズモンドはそこに向かった
部屋を出るとロズモンドはダンスタンに礼を言う
「すみません お気遣いいただいて・・・・・」
夜中の城で何かあってはとーダンスタンは護衛をかってでてくれたのだった
「趣味が料理でね 人が作る食べ物に興味があるんだ」
「簡単なスープと焼き菓子もどき 果物の絞り汁をあっためたのでもーと思っています」
「いいね」
野菜を刻み鍋に入れ煮ながら 卵と粉と蜂蜜を混ぜた中に刻んだ林檎を入れて鉄鍋で焼く合間に果物を絞り小鍋で温めるロズモンド
スープの仕上げに溶いた卵を流し入れ火を止める
脚に車のついた台にスープの入った鍋と果汁の入った小鍋を置き 焼き菓子は皿に盛り 幾つかの食器を盆に乗せて台に置く
ダンスタンが味見にと受け取った菓子は ひどく懐かしい味がした
「カズール・シャンデ将軍にはお世話になりました」
今更ながらロズモンドは思い出していた
シャンデ将軍は父親だと言ったのだ
今迄は考える余裕もなかったけれど どういう人なのだろう
ダンスタンは考え深げに顎をさする
「僕は将軍は女嫌いだと思っていた でなければ胸の中に誰か永遠の女性が棲みついているのかと
以前に妖艶な美女がシャンデ将軍に目を付けて かなり濃厚に迫ったことがあったのだけれどね
さも嫌そうに酷く冷たくあしらったことがある
それがこの城に着いたなり僕達に会うのは部下に任せて
メリサンド女官長に言われるままにすっ飛んで君とベルナーを捜しに行った
女官長を見るシャンデ将軍の眼がさ もう全然違う」
「そう・・・なんですか」
ロズモンドは父親は死んだと教えられていた
怯えながらファナクはそうした場所を何故か城に定めた
お城なら人の出入りがあるし食べ物もあるはず
父親が攻めようとした国の城が何故か安全な場所に思えた
それほど気持ちがはっきりしている時には将軍リシュウライが恐ろしかった
自分を見るリシュウライのギラギラした眼
人を操るようなところがある
ファナクも自分が思うと異なる言動をとっていることに 意識がはっきりしている時には気づくことがあった
ひどくぼんやりした気分になり 行こうなどと思っていないレイダンドとの戦いについてきてしまっていた
父親の皇帝コキンタクの言動もどこかおかしい
自分が男達に与えられようとしていると知ってファナクは恐怖と嫌悪から逃げ出した
ぼろ布で全身を包み姿を隠して人々に紛れ込み どうにか食べ物のある場所を見つけると 隠れ場所を捜して昼間はじっと潜んでいるようにした
鼠にでもなったような気分だったが仕方がない
空腹は耐え難かった
それに何処かに行くのは それはそれで恐ろしい
数夜 過ごして とうとう見つかってしまった
異国の若い男達につかまり暴れたけれどー
ファナクのような娘が暴れても若い男二人は笑うばかり
相手にもしていなかった
「ほら 言葉が分かるかもしれない人間の所へ連れていくから」
「何かしようとするんじゃない じっとしてろ」
意味は分からなかったが 声の穏やかさはファナクを少しだけ安心させた
それでも恐ろしかったけれど
連れていかれた部屋で見たのは くるくる金の巻き毛が乱れて額に落ちる若者が寝台から起き上がりかけている姿
すぐに力なくクッションにもたれかかったけれど
泣いている不思議な髪の色の娘
その娘はかいがいしく寝台にいる若者の世話をしていた
ファナクを捕まえた男二人と話していたその若者は ファナクに眼をむけると
「こんな格好で失礼ー」とファナクの国の言葉で言った
「通じてますか? 僕の育った領域では貴女の国の言葉も覚えるんです
今 ちょっと僕は弱っていますが・・・ああ そうだ自己紹介が先ですね
僕はベルナー
僕を看病してくれていた優しい女性はこの城の女官のロズモンド
貴女を見つけたのはブロディルの王子のリトアール様とダンスタン様
ああ この国の言葉が分かるように話せるようにしてほしいですか」
ベルナーと名乗る若者はとても優しい笑みを浮かべる
少し窶れているが とても美しい若者だった
ひどく豪華な金の髪 海のような色の瞳 整った顔立ちの
「あ・・・ファナク・・乗って来た船に居られなくなって逃げてきた
言葉が分かるようになれたら有難い
御願いする」
「じゃ ちょっとだけ魔法を使いますよ
暫くは保(も)つはずです」
ベルナーはファナクに向けて指を振った
ベルナーはファナク以外の人間に向けて言った「アクシナティの船に居られなくなり逃げてきたーと話しています
名前はファナク 今 こちらの言葉が使えるようになる その場しのぎの術をかけました」
「死にかけたばかりなのよ もう使っても大丈夫なの」
心配そうなロズモンド
ロズモンドの指に手を添え微笑んで見上げるベルナー「有難う ずっと声が聞こえてた 君の声が僕を戻した
君のおかげだー
こういう小さなモノなら大丈夫
甘い飲み物かスープかもらえる
そうしたら もっと元気になれそうだ」
頷くと涙を指で拭いながらロズモンドは部屋を出て行く
「ああ 僕が一緒に行こう」とダンスタン
夜中など王様や姫君達がちょっとしたものを欲しがった時用の小さな台所が階段の反対側にある
ロズモンドはそこに向かった
部屋を出るとロズモンドはダンスタンに礼を言う
「すみません お気遣いいただいて・・・・・」
夜中の城で何かあってはとーダンスタンは護衛をかってでてくれたのだった
「趣味が料理でね 人が作る食べ物に興味があるんだ」
「簡単なスープと焼き菓子もどき 果物の絞り汁をあっためたのでもーと思っています」
「いいね」
野菜を刻み鍋に入れ煮ながら 卵と粉と蜂蜜を混ぜた中に刻んだ林檎を入れて鉄鍋で焼く合間に果物を絞り小鍋で温めるロズモンド
スープの仕上げに溶いた卵を流し入れ火を止める
脚に車のついた台にスープの入った鍋と果汁の入った小鍋を置き 焼き菓子は皿に盛り 幾つかの食器を盆に乗せて台に置く
ダンスタンが味見にと受け取った菓子は ひどく懐かしい味がした
「カズール・シャンデ将軍にはお世話になりました」
今更ながらロズモンドは思い出していた
シャンデ将軍は父親だと言ったのだ
今迄は考える余裕もなかったけれど どういう人なのだろう
ダンスタンは考え深げに顎をさする
「僕は将軍は女嫌いだと思っていた でなければ胸の中に誰か永遠の女性が棲みついているのかと
以前に妖艶な美女がシャンデ将軍に目を付けて かなり濃厚に迫ったことがあったのだけれどね
さも嫌そうに酷く冷たくあしらったことがある
それがこの城に着いたなり僕達に会うのは部下に任せて
メリサンド女官長に言われるままにすっ飛んで君とベルナーを捜しに行った
女官長を見るシャンデ将軍の眼がさ もう全然違う」
「そう・・・なんですか」
ロズモンドは父親は死んだと教えられていた