とろとろ 眠りは誘う
ーそんなに眠いなら もう潔く眠ってしまえよーと誘ってくる
眠りに身を任せようか・・・このまま・・・
いつしか瞼は落ちて・・・・・夢を視〈み〉ている
うかうかと夢を見る
これは現〈うつつ〉か それとも・・・・・・
小癪な女がいたものだ たかが娘っ子
甘く口説いてやっても意に添わぬ
この女の父親も気にいらぬ男であったよ
躓かぬうちに邪魔な石は取り除くに限る
潰してやったわ
頼る者もいない娘っこ
どうとでもできると思ったに
甘々帝までもが 娘っこの美しさを耳にし 入内させよなどと画策を
面倒な
帝には我が娘をあてがっているというに
何をしても言うことを聞かぬゆえ
悪い噂を立ててやったわ
あれは人を呪っておると
そういう忌むべき者よと
それでも我が物とはならぬと頑な女はな
自ら死んだそうな
主〈あるじ〉亡き屋敷は見る影もない荒廃ぶり
余興に嘲笑ってやろうと見物に来てみた
ざまあみろ 言うことを聞かぬからだ
この儂に逆らうなどと
今頃は地獄にでもおちていようか
牛馬に踏まれておればよい
牛車を降りて外からボロ屋敷を眺めてやった
きらり 何かが触れたか・・・・・
何が 起きた?
これは何の香だろう
甘やかな不思議な香り 漂ってくる
何も見えない
昏い 昏い
今の今まで明るかったはずだ
面妖な
「明かりをお持ちします」
この声は何処からだ
確かに明るくなった
儂はいつ建物の中に入った
ここは誰の屋敷だ
御簾の奥にぼんやりと ぼんやりと 人らしき影
「おいでなさいまし お待ちしておりました」
いやいや かような女人は知らぬ 知らぬ
歌を贈ったこともないぞ
ぴいいい。。。。んと 不思議な音が聞こえる
指に何か絡んでいる
これは 細い細い これは
「お一人では お寂しかろうと少し集めてみましたの」
裾から何かが上ってきている びっしりと? びっしりと
この小さなモノは 小さなモノたちは・・・・・
「そのモノたちは大変飢えております 生き餌を待っておりましたの
悪しき血でも 血は血 肉は肉」
御簾をあげて女が姿を現す
それは美しい しかし額には2本の角ある異形の者
体が蜘蛛に覆われていく
小さいが無数の蜘蛛たち
わらわらと登ってくる
体が動かぬ 動けぬ
透明の糸が全身に絡んで 縛っている
た 助けてくれ 助けてくれ
気味が悪い この蜘蛛たちをどうにかしてくれ
目ざわりだ 邪魔だ
「姫様の父君を殺し 姫様を死においやったそちらこそ 邪魔者
消えていただきます」
異形の女は冷たく笑って姿を消した
後には・・・波のように押し寄せる小さな蜘蛛たち
ああ もう顎までも登ってきた
頬にも目にも
ああ目の中にも蜘蛛が
どうしてこうなった
何故儂が 儂が
これは夢か それとも
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ごめんなさい