綺麗に撮れません
君を待っていた | |||
|
ー日も暮れよ 鐘も鳴れ 月日は流れ わたしは残るー
待ち人の学生時代好きだった アポリネールの詩「ミラボー橋」の一節が浮かぶ
卒業式で会う約束をして・・・・実現しなかった
相手は一日随分遅くまで待っていたのだと 友人から教えられた
このままでは借りを作ったみたいで 気がすまない
だから同窓会で再会した時 強引に待ち合わせの約束を取り付けた
来なくて当然 なんだよな
10年は長い・・・・・
目の前でタクシーが停まった
「もう!駅の何口か言わないで 駅で待ってるーだけなんだもの
ここで30分 あっちで30分 駅中 走り回っちゃった
ほら!見栄張って新しい靴履いてきたのに 靴ずれしちゃった
足が痛いからタクシーに乗って捜したのよ」
「・・・・・」
「なんとか言いなさいよ」
「来てくれて有難う」
この時 彼の一生は決まったのだった
彼女にだけは頭が上がらない
それは一生続くのだった
昔捨てた女の面影 藤色の雨傘さして女は俺を待ち続けていたのだろうか 切ない思いが身を責める 行けば良かった
―ほかさへん― 嘘でもいい その一言を女は待っていたのか
書き下ろしの表題作他 著者自らが 自作を語る興味深いエッセイ
家族を 父について母についての思い
三島由紀夫氏への洞察 ロングインタビュー
対談
浅田次郎ファンなら 読んで損はない密度の濃い一冊です