「第一話 金魚が空を飛ぶ頃に」
一年と少し前に亡くなった野々宮芙二子は高校生の孫娘の鹿乃にいわくつきの品が納められた蔵の管理を託した だから鹿乃は時々 蔵の中の着物や帯を虫干しする
芙二子が近所の喫茶店の主人満寿から預かった金魚の柄の着物の色が変わってしまった
満寿は鹿乃の親友の三輪梨々子の祖父でもある
満寿が若い頃に愛し共に暮らした女性は ある日その金魚の柄の着物を残して去ってしまった 理由も告げずに
鹿乃は梨々子ともう一人の親友の鉢木奈緒と三人で 満寿の許を去った女性について調べる
その女性が愛した金魚 傾いた生家を立て直すために
鹿乃は着物の色を戻す方法に気付く
「第二話 祖母の恋文」
亡き祖母が懇意にしていた骨董店の北窓堂の主人が届けてくれたのは祖母からの預かり物だったという祖母から祖父への恋文
その恋文にまつわる帯も蔵にあるのだった
うなる帯の唸り声をしずめる方法とはー
祖母の若い頃と鹿乃は良く似ているーとう設定です
「第三話 山滴る」
祖母の芙二子と同じ写真に写っていた女性は若い頃は名前を知られた画家だったがーいつか筆を折ってしまっていた
その画家だった女性の着物も芙二子の蔵にあり 出せば着物の柄の季節が変わってしまった
鹿乃が女性の過去について話を聞きにいくとー二人の男性から愛されてしまった女性の哀しみが浮かぶ
知らず画家だった女性のことを話してくれた男性は 野々宮家の下宿人にして兄の親友でもある慧の父親であったことにー鹿乃は気付く
「第四話 真夜中のカンパニュラ」
夏になると鹿乃の兄の良鷹は別邸で暮らす
骨董店の如月堂の娘で 女子大生の真帆は父親から良鷹へのお使いを頼まれた
品物を届けた真帆はその別邸でひどく美しい女性を見る
一瞬で消えた女性は幽霊なのだった
ここに幽閉されたその女性は投身自殺したと伝えられている
だが実はー
家の為に結婚した令嬢は酷薄な夫とその妾に責め殺されたのだった
そして令嬢が愛した男性も殺されていた
巻末には 作品をイメージした御山ひわさんのイラストも収録されています