遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

日米の対中戦術の見直しが必用に!

2007-05-20 17:52:55 | EEZ 全般
 海軍産業展示会・会議「IMDEXアジア」が、シンガポールで15~18日に開催され、アジア・太平洋諸国の海軍関連支出が今後10年間で総額1,080億ドル(約13兆円)に達し、米国の1,050億ドル、欧州の990億ドルを上回る見通しであることが、運営するIMDEXアジア社(英)のマリオット代表が調査結果として明らかにされました。
 勿論最も多いのは、公表値を控えていても中国です。
 中国は、さらに海軍力だけでなく、台湾有事に米空母機動艦隊来援を阻止する目的で、米空母攻撃用の対艦弾道ミサイルの開発に着手するとともに、ロシアから超音速長距離爆撃機も導入し、対米軍戦術を修正していることが、日台軍事筋から15日、明らかにされたのだそうです。
 この新戦術では、米空母機動艦隊が台湾海峡への接近が困難となり、対中戦術の見直しを余儀なくされるというものです。
 勿論、自衛隊も無力化し東アジア全体の安全保障にも大きな影響が及びます。
 
中国、米空母攻撃ミサイル開発へ 台湾有事備え (5/16 産経朝刊)

 中国軍が、台湾有事をにらんで米空母攻撃用の対艦弾道ミサイルの開発に着手するとともに、ロシアから超音速長距離爆撃機も導入し、対米軍戦術を修正していることが15日、明らかになった。米軍や自衛隊の迎撃兵器の射程外からの攻撃に力点を置くことで、台湾有事に際して米空母機動艦隊来援を阻止する目的とみられる。日台軍事筋が明らかにした。

 こうした中国の戦術修正が成功すれば、米機動艦隊の台湾海峡接近が困難となり、米軍は対中戦術の見直しを余儀なくされる。また、自衛隊の現有装備では新たな脅威を防御できず、東アジアの安全保障にも大きな影響を与えそうだ。

 同筋によると、中国軍が改良に着手したのは、射程1500~2500キロの準中距離弾道ミサイルである「東風21」。動く目標を赤外線で探知する装置を取り付けることで、米空母攻撃も可能となる。東風21は核弾頭の搭載が可能で、100基近くが既に配備されている。今年1月、衛星の攻撃実験に使用されたのは東風21の派生型で、改良が進んでいる。

 また、早ければ年内にロシアから10~20機の超音速長距離爆撃機バックファイアー(Tu-22M)が売却またはライセンス生産契約される見通しだ。同爆撃機は、戦闘行動半径約4000キロで、射程500キロのAS-4空対艦ミサイルを3基まで搭載できる。米本土も爆撃可能なため、第2次戦略兵器制限交渉(SALTII)で、保有を認める代わりに空中給油装置撤去を条件としたほど、米側が恐れた兵器だ。

 米軍は対艦弾道ミサイルやAS-4への迎撃手段を有しているが、万全ではない。機動艦隊の防御兵器であるイージス・システムも「対艦弾道ミサイルやAS-4を大量に同時発射されれば、すべてを迎撃できる可能性は大きく低下する」(日台軍事筋)からだ。被弾の恐れがあれば機動艦隊も容易に台湾海峡に近づけない。

 一方、自衛隊保有の対空ミサイルも、Tu-22Mは射程外となる可能性が極めて高い。海上自衛隊のイージス艦も中国大陸に近づけば被害を受ける可能性があり、防衛省は新たな迎撃手段の開発・配備を含む戦術の再構築を迫られそうだ。

 この日(5/15)の産経には、関連記事が上記の転載の他に 2つ載っているのですが、そのひとつは、中国が米国との正面対決では未だ叶わないことを自覚し、冷戦時代のロシアに学び、正面対決を避け射程外からの攻撃という「非対称戦」という新戦術に切り替えたというものです。
 台湾有事で米空母機動艦隊来援を阻止するために、93,000トン級の原子力空母と、48,000トン級通常型空母の建造計画があるのだそうですが、空母の装備や関連部隊の構築など、開発が遅れています。
 そこで、戦力や技術力で大きな開きがある弱者が、相手=強者とは異なる戦術・手段で戦う戦法の「非対称戦」へ一時的に戦術転換したというものです。

 米空母機動艦隊来援を阻止するために、針路に潜水艦を潜ませ、威嚇・攻撃する戦術をまず進めていて、「IMDEXアジア」で明らかにされた内容でも、中国の潜水艦の増強が上げられています。
 しかし、現状の中国潜水艦では、米海軍と海上自衛隊の連携には太刀打ちできないのだそうです。
 
 そこで、湾岸戦争の米軍の精密誘導兵器を駆使した戦術「C4ISR」の重要性に着目したのです。
 ひとつは、「C4ISR」の弱点である衛星破壊を、1月に「東風21」の派生型で成功させました。
 もう一つは、「東風21」に動く目標を赤外線で探知する装置を取り付けることで、米空母を攻撃することです。

 冷戦時代のソ連軍は米機動艦隊に空母で対抗するのをあきらめ、米軍の対空ミサイルの射程外から対艦攻撃できる超音速長距離爆撃機バックファイアー(Tu-22M)や攻撃型原潜(SSN)を投入したのだそうですが、ここにも学んで、ロシアから「地域の軍事均衡を著しく壊す」と拒否されていたTu-22Mの購入商談にも旧式化したこともあり成功したのです。
 ロシアでは廃機寸前のTu-22Mですが、自衛隊に外洋における迎撃手段はないのだそうで、日本の対米後方支援を嫌う中国が日本出入りの船を威嚇したり攻撃することが可能となり、日本のエネルギー輸送路にとっては大きな打撃で、日本にとっても安全保障上大きな脅威となり身動き出来なくなります。

 頼みのイージス・システムが、新たに中国が配備する大量の「東風21」や、「Tu-22M」が発射する「AS-4」を迎撃できる可能性は大きく低下することで、被弾の恐れがある機動艦隊が容易に台湾海峡に近づけないことになるのです。
 日本の自衛隊は勿論手も足も出せません。

 日米の戦術の見直しをせざるを得ないというのですが、ライスの言動や民主党の米国では、石原知事が米国で公演し不満を唱えたそうですですが、パートナーと甘えるのではなく、自国の事ですから、自国でも増強を進めて行かねばならないと考えます。
 中露や米国に匹敵する軍事力を、日本独自で保有するのは困難ですから、多国間の同盟で相互の安全保障体制を築くことになります。

 長文となってしまいました。
 以下は、私の備忘録として掲載するものですのですので、ご興味がおありでしたらご覧下さい。

 産経のもう一つの記事【湯浅博の世界読解】中国に囲まれる日本では、日本の採るべき対中戦術として、孫子の兵法の「実を避けて虚を撃つ」を進めています。
 ランチェスター戦略の弱者の戦略とも通じるともいえるのでしょうか?世界最強のバルチック艦隊に、生まれたての赤ん坊の日本艦隊が勝利した大昔のことがよぎります。
 
【湯浅博の世界読解】中国に囲まれる日本  (5/16 産経朝刊)

 日米が北朝鮮やイラク情勢に手足をとられている間に、東シナ海の向こうで巨大軍事力が生まれつつある。特に中国の海軍力は、手持ちの碁石を着実に増やして日本を取り囲みつつあるらしい。漏れ伝わる最新情報を拾ってみると次のようになる。

 米海軍情報部の分析報告書によると、中国は追尾が難しい新型原子力潜水艦5隻を建造中だ。核弾頭が搭載可能な射程5000マイルのミサイルを装備するという(米紙)。

 中国共産党の内部資料によると、中国が9万3000トン級の原子力空母の建造計画をもち、さらに4万8000トン級通常型空母の建造計画もある(韓国紙)。

 中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)に海軍の合同演習の実施を働きかけている。軍事大国の圧力に対して小国は、「真剣に検討」として時間を稼いでいる(英軍事専門誌)。

 そうなると、気になるのは「中国海軍と海上自衛隊が戦ったらどちらが勝利するのか?」というシンプルでかつ深刻な疑問だ。これに、日米防衛専門家はどう応えるのだろうか。

 防衛大学の太田文雄教授は新著『インテリジェンスと国際情勢分析』で、日本は上質の碁石を持ちながら、気づいたときには周りを質の悪い碁石に囲まれている状況に似ていると解説する。

 太田氏によると、米海軍のB・コール退役大佐は2000年に、「中国海軍が海上自衛隊に比肩するようになるのは少なくとも20年はかかる」と予測していたという。ところが、アーミテージ前国務副長官は最近、「中国軍の近代化は予想を上回るスピードで進んでいる。CIAも国務省情報局も、そのペースを過小評価していた」とたびたび述べている。

 ところが、中国は明らかに能力をひた隠しにしている。もっぱら実力を蓄えることに徹し、公表値を下げて「脅威論」を退ける戦略だ。前述のように、情報がメディアに漏れることがあっても、もっぱらダンマリを決め込む。

 こうした政策は、中国に利害をもつ人々には格好の中国擁護の理由を提供しているようだ。

 米国内では中国専門家、対中投資家、企業経営者らが、「もっと大局的な見地からみるべきで、中国は正しい方向に向かいつつある」という答えとなって跳ね返る。こうした傾向を米国のシンクタンクAEIの研究員ジェームズ・マン氏は「気休めのシナリオ」だと排除している。

 あの衛星破壊実験に関しても、中国軍が党と政府に知らせずに実行しているとする「気休め」が横行した。軍が独走してはいるが、連絡調整さえしっかりしていれば政府がコントロールするはずだと好意的に考える。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)の2人の研究員は外交誌への論文で、中国の政府と軍部の間の連絡調整がうまくいっていないとの認識から、中国こそ国家安全保障会議(NSC)が必要だと主張していた。

 しかし、これもまた「気休めのシナリオ」であることは、衛星破壊実験が実は今年だけに限っていないことに表れている。成功したのは今年だが、昨年でさえ冬と秋にも実験して失敗しているのだ。

 あからさまな破壊実験を、胡錦濤主席がトップの共産党中央軍事委員会が承認していないとは考えにくい。破壊実験で米国から激しい反発が起きたことに、中国首脳がとまどっているというのが実情だ。

 中国との対局はまだ始まったばかりである。孫子の兵法でいえば、日本がまず予算で碁石を増やし、「実を避けて虚を撃つ」ように弱点から囲みを脱する手が残されている。





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