TPPへの参加議論がようやく高まりを見せてきています。野田総理などは参加に積極的姿勢を示していますが、政府・民主党内では意見が分かれ、メリット、デメリットについて政府発表資料も農水省と経産省で食い違う現状で、農林水畜産業と製造業との対立構造がクローズアップされています。
このTPP加入に欠かせないとも言えるし、TPPに関係なく少子高齢化で担い手が先細りの農林水畜産業に迫られている改革ですが、政府の「食と農林漁業の再生実現会議」(議長・野田首相)は、国内農業の振興を図るための基本方針と行動計画の原案をまとめたのだそうです。
各紙で報じていますが、産経がうまくまとめているようでした。
農地の規模拡大や新たに就農する人を増やし農業の体質強化を図るほか、加工業や流通業などへの進出を目指す農林漁業者を資金面でサポートする投資ファンドの設立を検討することなどが盛り込まれた。また、太陽光や風力、水力など、農山漁村に豊富に存在する再生可能エネルギーを積極的に活用することや、原子力発電所の事故で揺らいだ国産の食品に対する信頼回復を図ることも明記された。(読売)とのことですが、具体性に欠け、なによりも「個別補償制度」が温存されていることが注目されます。
このバラマキ政策が、兼業農家や高齢化小規模農家を農地の囲い込みに逆戻りさせたのです。積極経営を目指し、農地を借り集めていたものが、バラバラに散って昔に戻っていったのです。
減反された農地、耕作放棄された農地に手を付けずに、規模拡大というのも矛盾だし、少し横道にそれますが、生態系や自然環境破壊を防ぐためにも里山の維持は必要です。
TPP加入の為の反対派工作のために急造された感が否めない農業再生策。反対派を説得するために造るのではなく、積極的に改革に取り組む農家を支援し、高齢化した農家、兼業で細々と現状維持を続ける農家が離農(直接耕作労働をするのではなく、賃貸ししたり、株主化するなどの形で関与する)しやすくなる構造改革を目指すものをつくり、震災被災地ではその復興の道しるべともなる、日本の農業の未来を描く案となることを願います。
産経が指摘する、市場原理に基本を乗せ、不具合点や進捗を促すための支援をする方法でなければ、食管法以来綿々と続いた保護政策で、何の改革も進まなかった過去の繰り返しに終わってしまいます。
余談ですが、山田、鹿野両氏も、日本の農業の未来のあり方を描いて説いていただきたいし、自公など野党も傍観せず、積極案を示すべきです。
# 冒頭の写真は、食と農林漁業の再生実現会議
この花の名前は、ガウラ(白蝶草)
↓よろしかったら、お願いします。
このTPP加入に欠かせないとも言えるし、TPPに関係なく少子高齢化で担い手が先細りの農林水畜産業に迫られている改革ですが、政府の「食と農林漁業の再生実現会議」(議長・野田首相)は、国内農業の振興を図るための基本方針と行動計画の原案をまとめたのだそうです。
各紙で報じていますが、産経がうまくまとめているようでした。
農業再生計画 ばらまきでは強くならぬ (10/21 産経主張)
野田佳彦政権が、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加条件を整備すべく、農業再生計画をまとめた。
加盟に伴う関税撤廃などで打撃を受ける農家への対応は当然だろう。だが、コメの生産量を事前に調整する減反や、減反への参加を前提に所得と生産費の差額を補填(ほてん)する戸別所得補償の見直し策が示されなかったのはどうしたことか。
全体としてTPP反対派を懐柔するための新たなばらまきに偏っており、農業が本当に強くなるのかどうか疑わしい。その場しのぎの政策の寄せ集めでは中長期の農業再生につながらない。
野田政権はTPPを、競争力ある日本農業に生まれ変わらせる好機と位置付け、抜本改革を目指さなければならなかったはずだ。
再生計画では、減反を継続したまま、離農した農家が農地を売ったり貸したりする場合、新たに奨励金を支払うとする。規模拡大する農家側にも助成金を支払う制度はすでに存在する。手厚い補助金で「農家1戸当たりの農地面積を現在の10倍以上の20~30ヘクタールに拡大し、収益力を強める」という。
だが、補助金さえ出せば、問題が解決すると考えるのは、勘違いも甚だしい。
補助金なしでも、減反を廃止してコメ作りを自由にし米価を市場に委ねれば、価格が下がり、地代の方が得になる兼業農家は農地を専業農家に貸すようになる。そのうえで、意欲的な専業農家に限って所得補償する方式に切り替えれば、財政支出を抑制しつつ農業の規模拡大を進められるだろう。
高齢化が進み、耕作放棄地は全国に広がるのに、担い手対策は具体性を欠く。そうした中で、既存の農協を離れ自ら生産から流通、販売、加工まで手掛ける元気な農家や農業法人も少なくない。
再生計画には、挑戦する農家を「再生の核」とし、農業を成長産業に育てる視点が不可欠だ。
農家が潤沢な補助金を得られるという誤った印象が広まり、それが現実化すれば、財政難に陥りかねない。何のためのTPP交渉だったのか、ということになる。
コメの一部市場開放が決まった平成5年のウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)合意の際、6兆円もの対策費を支出しながら、農業衰退には歯止めをかけられなかった。今の日本には、同じ轍(てつ)を踏む余裕などないのである。
野田佳彦政権が、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加条件を整備すべく、農業再生計画をまとめた。
加盟に伴う関税撤廃などで打撃を受ける農家への対応は当然だろう。だが、コメの生産量を事前に調整する減反や、減反への参加を前提に所得と生産費の差額を補填(ほてん)する戸別所得補償の見直し策が示されなかったのはどうしたことか。
全体としてTPP反対派を懐柔するための新たなばらまきに偏っており、農業が本当に強くなるのかどうか疑わしい。その場しのぎの政策の寄せ集めでは中長期の農業再生につながらない。
野田政権はTPPを、競争力ある日本農業に生まれ変わらせる好機と位置付け、抜本改革を目指さなければならなかったはずだ。
再生計画では、減反を継続したまま、離農した農家が農地を売ったり貸したりする場合、新たに奨励金を支払うとする。規模拡大する農家側にも助成金を支払う制度はすでに存在する。手厚い補助金で「農家1戸当たりの農地面積を現在の10倍以上の20~30ヘクタールに拡大し、収益力を強める」という。
だが、補助金さえ出せば、問題が解決すると考えるのは、勘違いも甚だしい。
補助金なしでも、減反を廃止してコメ作りを自由にし米価を市場に委ねれば、価格が下がり、地代の方が得になる兼業農家は農地を専業農家に貸すようになる。そのうえで、意欲的な専業農家に限って所得補償する方式に切り替えれば、財政支出を抑制しつつ農業の規模拡大を進められるだろう。
高齢化が進み、耕作放棄地は全国に広がるのに、担い手対策は具体性を欠く。そうした中で、既存の農協を離れ自ら生産から流通、販売、加工まで手掛ける元気な農家や農業法人も少なくない。
再生計画には、挑戦する農家を「再生の核」とし、農業を成長産業に育てる視点が不可欠だ。
農家が潤沢な補助金を得られるという誤った印象が広まり、それが現実化すれば、財政難に陥りかねない。何のためのTPP交渉だったのか、ということになる。
コメの一部市場開放が決まった平成5年のウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)合意の際、6兆円もの対策費を支出しながら、農業衰退には歯止めをかけられなかった。今の日本には、同じ轍(てつ)を踏む余裕などないのである。
農地の規模拡大や新たに就農する人を増やし農業の体質強化を図るほか、加工業や流通業などへの進出を目指す農林漁業者を資金面でサポートする投資ファンドの設立を検討することなどが盛り込まれた。また、太陽光や風力、水力など、農山漁村に豊富に存在する再生可能エネルギーを積極的に活用することや、原子力発電所の事故で揺らいだ国産の食品に対する信頼回復を図ることも明記された。(読売)とのことですが、具体性に欠け、なによりも「個別補償制度」が温存されていることが注目されます。
このバラマキ政策が、兼業農家や高齢化小規模農家を農地の囲い込みに逆戻りさせたのです。積極経営を目指し、農地を借り集めていたものが、バラバラに散って昔に戻っていったのです。
減反された農地、耕作放棄された農地に手を付けずに、規模拡大というのも矛盾だし、少し横道にそれますが、生態系や自然環境破壊を防ぐためにも里山の維持は必要です。
TPP加入の為の反対派工作のために急造された感が否めない農業再生策。反対派を説得するために造るのではなく、積極的に改革に取り組む農家を支援し、高齢化した農家、兼業で細々と現状維持を続ける農家が離農(直接耕作労働をするのではなく、賃貸ししたり、株主化するなどの形で関与する)しやすくなる構造改革を目指すものをつくり、震災被災地ではその復興の道しるべともなる、日本の農業の未来を描く案となることを願います。
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