チャイナリスクは、大きく分けて、経済と社会と政治とにあり、経済は上述の成長率の鈍化と、格差、環境汚染。社会は、民族差別と弾圧、人権軽視。政治は、一党独裁政治で、憲法より党が上位にあるという非法治国家であることと、党内の派閥抗争。
高度経済成長が、これらのリスクを覆い隠していましたが、今、顕在化しはじめてきたのです。
今回は、チベットの民族差別と、経済のなかでも遊爺が最も知りたい財政状況の一端の記事に接したので、備忘録としてアップします。
【上海=鈴木隆弘】中国の習近平政権は、チベット自治区の成立から1日で50年を迎えるのに合わせ、経済発展の「実績」を強調し、チベット統治の正当性を主張する宣伝を強めている。
習国家主席は8月24、25の両日、5年ぶりに北京でチベット政策をめぐる「中央チベット工作座談会」を開催し、「祖国分裂、社会の安定を破壊する行為は法により打撃を与える」と強調した。
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が求める「高度な自治」を正面から否定。「闘争の方針、政策は揺るぎない」と対決姿勢を示した。仏教寺院や学校の管理強化にも言及した。
また、27日付の共産党機関紙・人民日報は、「チベットの驚くべき成果は、党の政策を堅持した結果」だと論評した。
中国政府は自治区にこれまで、総額6000億元(約11兆4000億円)の財政支援を行い、経済は過去20年以上、2ケタ成長を実現している。
政府は、道路や電気、住宅などの基盤整備を進めた結果、住民の生活水準は大きく改善したと主張。9月初めに区都ラサで記念式典を開き、自治区の「成果」を誇示する予定だ。
「監視員」常駐で抑圧強化
チベット族に対する中国政府の締め付けは強まるばかりだ。
2008年3月にラサなどでチベット族による大規模な暴動が発生した後、当局は自治区各地に「監視員」を常駐させ、住民の動向に目を光らせるようになった。自治区内外で中国のチベット政策に抗議する焼身自殺が相次いだ。
ラサを訪れたチベット仏教関係者によると、ダライ・ラマが住んだポタラ宮には中国国旗がはためき、周辺では武装警官らが警戒に当たる。ダライ・ラマの写真を飾ることは厳禁だ。
住民は居住地を離れる際は許可証が必要で、旅券の取得は困難。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは「差別的な旅券制度を撤廃すべきだ」と訴える。
中国当局は、自治区成立前のチベットを「暗黒、腐朽、残酷な政教一致の制度が実施されていた」と批判し、チベット仏教の抑圧を進めてきた。米政府系放送局ラジオ自由アジアによると、当局に抵抗した僧侶が拘束され、寺院から追放されるケースもあった。あるチベット族の男性は「寺院はチベット族の団結の根源。寺院の管理は、民族分裂が狙いだ」と語る。
■中国チベット自治区を巡る動き
1949年10月 中華人民共和国成立
1951年10月 人民解放軍がラサに進駐
1959年 3月 チベット動乱。ダライ・ラマ14世がインドに亡命
1965年 9月 チベット自治区成立
1988年 6月 ダライ・ラマ、「チベットに高度な自治」を提唱
1989年 3月 ラサで大規模な暴動、戒厳令発令
1989年12月 ダライラマ、ノーベル平和賞受賞
1993年 5月 ラサで暴動
2006年 7月 チベット自治区と青海省の間に鉄道開通
2008年 3月 ラサなどで大規模な暴動
2011年 9月 ダライ・ラマ、「転生」による地位継承制見直し検討の方針示す
中国は、チベット、ウイグル、台湾、尖閣諸島などを核心的利益と呼び多国の干渉を許さない、国内の重要拠点として内外にアピールしていますね。
ひとりっこ政策という、人権無視の政策を強行してまで人口増を抑えねばならなかったのでした。(結果高齢化と労働人口減を迎え、見直しを迫られていますが)
その中で、漢民族の生活圏を優先確保する為に、他民族を迫害・支配、時には消滅させようとさえしてきたのでした。
記事で、人民日報は、「チベットの驚くべき成果は、党の政策を堅持した結果」だと論評しているとのことですが、このことがまさに漢民族がチベットに進出・侵略した事実であることは、世界中が知っていることですね。
今、中国の民族差別と迫害について、人権問題として声をあげているのは米国くらいなものです。
対中貿易を確保したい先進国、特に欧州諸国。経済援助が欲しい発展途上国。これらの国々は、経済の分野で中国に擦り寄っていますので、この中国の人権迫害に目をつぶっています。
日本も何故か、声をあげることは殆どありません。が、歴史問題で、慰安婦や徴用工を人権問題として取り上げる中国(韓国は捨て置きます)。現在進行形で人権弾圧をしている国に、日本は米国と共に、声をあげるべきです。声をあげて、攻めることは、最大の防御ともなります。きれいに言えば、日本も反省すべきははんせいしているし、戦後は実行していない(売春防止法は暫く経ってからですが)。現在人権弾圧を実行している中国は、直ちにやめろと!
民族問題も経済と密接に連動するのですが、中国経済が曲がり角に差し掛かっている兆候が見られる昨今で、注目しているのが、中国の財政状況です。
日本も米国も、その他の先進国も、財政赤字に悩んでいます。米国は、そのために軍縮を進め、世界の警察の役割を放棄しました。
中国の高度経済成長は、地方政府も含めた財政投資の官需がリードしたもので、個人消費はいまだに未熟(富裕層は生まれてきていますが)です。軍備や、軍備を上回ると言われる治安費への財政支出も膨大で、しかも増え続けています。
その財源は、無尽蔵ではありません。輸出や海外からの投資から得られる税が財源になっていますが、高度成長が続いていれば税収も伸びますが、成長が止まれば、税収も伸びません。まして、個人消費が未熟で、官需主導経済となれば、成長の鈍化対策で、財政出動が必要となり、収入は減るのに支出が増えます。
日本も国内の個人消費を伸ばせと、盛んに言われていました。つまり、先進諸国が辿る道を、中国も辿らねばならないのですね。
中国経済に対する疑心暗鬼が市場を揺さぶっている。突然の人民元切り下げをきっかけに、中国経済の変調ぶりに慌てた市場関係者は、中国の経済データの見直しを急いでいるが、その過程で、これまで見過ごしてきた様々な疑問が浮かび上がり、不安心理が増している。
「人民元の切り下げは、中国人民銀行(中央銀行)の財務体質改善という側面があったのではないか」。T&Dアセットマネジメントの神谷尚志チーフ・エコノミストは推測する。
神谷氏が着目したのは、人民銀の保有する外貨建て資産が中国の外貨準備を上回っている点だ。中国国家外貨管理局によれば、7月末時点で外貨準備は3兆6513億ドル。一方、人民銀によれば、人民銀の外貨建て資産は26兆4069億人民元。直近レートで換算すると4兆1400億ドルとなり、5000億ドル近い開きがある。
日本のように政府による外国為替売買のための外国為替資金特別会計(外為特会)を持たない国では、中央銀行の保有する外貨建て資産と外貨準備はおおむね一致するという。人民銀は人民元高・外貨安により大きな含み損を抱えているというのが神谷氏の読みだ。
市場では、中国による米国債の売却観測がくすぶるが、武者リサーチの武者陵司代表は「中国問題の本質は資金繰りにある」とみる。
中国の外貨準備は7月末時点で、14年6月末のピーク(3兆9932億ドル)から約9%減少した。対外純資産は14年6月末の1兆9921億ドルから15年3月末時点の1兆4038億ドルへと30%も減少した。
14年7月から15年3月までの経常収支の累計は2147億ドルの黒字。普通に考えれば、対外純資産は2兆ドルをゆうに突破していても不思議ではない。経常黒字にもかかわらず、外貨準備、さらに対外純資産が減少したのはなぜか。
武者氏は(1)資本逃避の激増(2)対外資産での巨額の損失(3)統計そのものが信用できない――などの可能性を指摘する。中国は過去数年、海外での資源開発に熱心だった。
中国の対外債務残高は3月末時点で4兆9769億ドル。過去3年で5割強増加した。「中国は経常収支が黒字で外貨準備も潤沢だから、いざとなればなんでもできるので大丈夫」。こんな市場関係者の常識が揺らいでいると、武者氏は話す。
8月の主な国の主要株価指数について、騰落率をランキングにすると、下落トップはペルーの13%、さらに中国と香港の各12%、オランダ10%、ドイツとベトナム、シンガポールの9%と続く。当事国の中国・香港を除いても、いずれも中国経済や資源と関係が深い国だ。深まるチャイナ・ショック――。1日の日経平均株価は700円あまり下落したが、情報開示に疑念の残る国を発端とした世界市場の動揺はやっかいだ。
理財商品で拡大した不動産バブル。生じた膨大な不良債権は、とりあえずは蓋をして、官制株価バブルを仕掛けましたが頓挫しました。低迷する輸出で、後発の国々の追い上げとの価格競争力を確保する為の為替レート変更も、中国経済の窮状が露呈し、中途半端なレベルで中断に追い込まれています。
これらの対応でも、財政出動が余儀なくされています。
どこまで信用してよいのかわからない中国の経済指標ですが、いろいろ綻びが出て来始めている様ですね。
無尽蔵かと勘違いさせられそうな、軍備や治安費、景気刺激への財政投資、発展途上国への札束ばら撒き外交。そこへバブル崩壊防止の支出が追加され、流石の中国の財政も天井が見え始めた様子です。
世界一の財政赤字を抱える日本の国民の遊爺が偉そうには言えませんが、中国の財政赤字の状況には注目が必要ですね。ただ、情報がほとんどない。
# 冒頭の画像は、一進一退を続ける株価を見つめる人々
この花の名前は、オドリコソウ
↓よろしかったら、お願いします。