遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

ドル基軸通貨体制を揺さぶろうとする国家戦略の中国 それを後押しする欧州諸国

2015-12-09 23:58:58 | 日本を復活させる
 IMFが、人民元のSDR入りを決定しました。しかも、ドル、ユーロに次ぐ第三位の地位。SDR構成通貨の条件は、国際取引の決済で「広く利用」、外国為替で「広く取引」されているという量的なものに加え、「自由に利用可能」という質的な条件を満たすことが必要とされ、後者を満たさないということで前回の検討では認められませんでした。しかし今回は、欧州勢の後押しでSDRの構成通貨に採用された経緯は諸兄がご承知のことです。
 採用後改善されることを期待するとのことですが、一旦権利を得てしまった中国共産党が、現状の有利な条件を放棄するはずがないことは明らかです。
 条件を歪めた採用は、資本主義そのものを変質させかねないと指摘し、「自由に利用可能」について、日本が為替の完全変動相場制導入について頑強に言い続けることを主張している記事がありました。
 目先の利益に目がくらんでいる欧州勢に任せていては、ドルの基軸通貨体制を人民元でとって変わろうとする習近平の野望を後押しすることになり、自由を標榜する資本主義が、独裁管理の中国流に支配されかねません。
 

人民元国際化の「脅威」と戦え 評論家・西尾幹二 (12/9 産経 【正論】)

 
今年入手した外国情報の中で一番驚いたのは、ドイツに30年以上在住の方から中国の新幹線事故、車両を土中に埋めたあの驚くべきシーンが、ドイツではほとんど知られていないという話だった。
 
中国の否定面の情報統制は欧州では十分に理由がある。良いことだけ伝えておく方が政財界にとって都合がいい
し、一般大衆はアジアの現実に関心がない。アメリカでも中国の反日デモは十分には報道されていないと聞く。

≪ドルを揺さぶる国家戦略に弾み≫
 
負債総額約3千兆円、利払いだけで仮に年150兆円としても返済不能とみられている中国経済。主要企業は共産党の所有物で、人民元を増刷して公的資金を企業に注入しては延命をはかってきた砂上の楼閣に中国国民も気づいている。早晩、人民元は紙くずになると焦っているからこそ、海外に巨額を流出
させ、日本の不動産の爆買いまでするのではないか。天津の大爆発、鬼城(ゴーストタウン)露呈、上海株暴落、北京大気汚染の深刻さ。中国からはいい話はひとつも聞こえてこない。
 日本人はこの隣国の現実をよく見ている。にもかかわらず、
まことに不思議でならないのだが、欧米各国はにわかに人民元の国際化を後押しし始めた
。中国経済の崩壊が秒読み段階にあるとさえ言われる時機にあえて合わせるかのごとく、国際通貨基金(IMF)が人民元を同基金の準備資産「特別引き出し権(SDR)」に加えることを正式に決めた。
 これで中国経済がすぐに好転するわけではないが、
長期的にはその影響力は確実に強まり、ドル基軸通貨体制を揺さぶろうとする国家戦略に弾みがつくことは間違いない。IMFは準備期間を置いて、中国政府に資本の移動の自由化、経済指標の透明化、変動相場制への移行を約束させると言っているが、果たしてどうだろう。昨日まで恣意(しい)的に市場操作をしていた人民銀行が約束を守るだろうか。言を左右にして時間を稼ぎ、国際通貨の特権を存分に利用する
のではないだろうか。

≪資本主義が変質する恐れも≫
 
欧州諸国は中国が守らないことを承知で中国を救う
。それが自分たちを守る利益となると考えていないか。ドイツはフォルクスワーゲンの失敗を中国で取り戻し、イギリスはシティの活路をここに見ている。
 私は
中国と欧州の関係を「腐肉に群がるハイエナ」(『正論』6月号)と書いた。米国の投資家は撤退しかけているが一枚岩ではない。中国の破産は儲(もう)けになるし、対中債務は巨額で、米国は簡単に手が抜けない。中国経済は猛威をふるっても困るが、一気に崩壊しても困る
のだ。ちょうど北朝鮮の崩壊を恐れて周辺国が「保存」している有り様にも似ている。

 しかし、
日本は違った立場を堂々と胸を張って言わなくてはいけない。共産党の都合で上がったり下がったりする基軸通貨など御免だ。為替の変動相場制だけはSDR参加の絶対条件
であることを頑強に言い張ってもらいたい。
 「パニックや危機が起きた瞬間に中国当局が資本の移動を取り締まるのではという恐れがある限り、人民元をSDRの準備通貨とすることはできない」というサンフランシスコ連銀総裁のコメントを私は支持する。さもないと、
資本主義そのものが変質する恐れがある目先の利益に目が眩(くら)む欧州首脳は「資本家は金儲けになれば自分を絞首刑にするための縄をなう」の故事を裏書きしている


≪民主化のみが唯一の希望≫
 忘れてはいけないのは
中国は全体主義国家であって近代法治国家ではないことである。ヒトラーやスターリンにあれほど苦しんだ欧米が口先で自由や人権を唱えても、独裁体制の習近平国家主席を前のめりに容認する今の対応は矛盾そのもので、政治危機でさえある。この不用意を日本政府は機会あるごとに警告する責任がある


 思えば戦前の中国大陸も今と似た構図だった。日本商品ボイコットと日本人居留民襲撃が相次ぐ不合理な嵐の中で、欧米は漁夫の利を得、稼ぐだけ稼いでさっさと逃げていった。政治的な残務整理だけがわが国に押しつけられた。今度も似たような一方損が起こらないようにしたい。
 歴史と今をつないでしみじみ感じるのは“日本の孤独”である。誠実に正しく振る舞ってなお戦争になった過去の真相を、今のアジア情勢が彷彿(ほうふつ)させる。

 
欧州はアジアがすべて中国の植民地になっても、自国の経済が潤えばそれで良いのだ
。東南アジア諸国連合(ASEAN)のうち一国でも中国の支配下に入れば、中国海軍は西太平洋をわがもの顔に遊弋(ゆうよく)し、日本列島は包囲される。食料や原油の輸入も中国の許可が必要になってくる。
 米国も南シナ海の人工島を空爆することまではすまい。長い目でみれば中国の勝ちである。
中国共産党の解消と民主化のみが唯一の希望である。わが国の経済政策はたとえ損をしてでもそこを目指すべきで、IMFの方針と戦う覚悟が差し当たり必要であろう。(にしお かんじ)


 欧州諸国は、遠いアジアでの出来事より、目先の自国の国益を優先させています。米国は習近平の「中華の復興」を目指す覇権指向への警戒感は持ち始めていますが、国内経済活性化に占める対中輸出の必要性を唱えるパンダハガーもまだ健在です。
 そこで、最も被害が大きい日本が、SDR採用条件を中国が目指すよう、声をあげ続けねばならないと、記事は主張しています。
 歴史認識で、戦勝国と敗戦国の構造を強調し日米同盟に亀裂を産ませ、覇権拡大を目論む習近平への抑止カードの一つに、SDR採用条件を加えればいいのです。米国は、機を観てはこのカードや、本件とは関係ありませんが、人権問題も対中抑止カードとして活用しています。
 攻撃は最大の防御です。
 
 攻撃という側面では、安倍政権は、円借款でAIIBへの対抗策を打ち出して、中国の覇権拡大への方策も講じていますね。
 

円借款の条件緩和、首相が表明へ…中国に対抗 : 読売プレミアム

 政府は、新興国にインフラ(社会基盤)整備などの資金を貸し付ける円借款について、現地政府の保証を必須要件から外すなど抜本改革を行う方針を固めた。
 
手続きに要する期間も半減
し、大型インフラの受注につなげたい考えだ。インドネシアの高速鉄道計画の受注競争で中国に敗れた経験などを踏まえたもので、安倍首相が21日にマレーシアで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合で表明する。
 首相は会合で、アジアのインフラ整備に5年間で1100億ドル(約13兆円)を支援する考えを表明し、「円借款をアジアのニーズに応えるものに改革する」と述べる予定だ。政府は
「円借款が1958年に始まって以来の大改革」
(関係者)と位置づけている。

 具体的には、現地政府以外に資金を貸し付ける場合、損失が生じた際には現地政府が穴埋めする100%の政府保証を求めてきたが、これを改める。国営企業や自治体による重要案件に対する円借款では政府保証を必須要件とせず、現在は約3年を要している手続き期間を最大で1年半程度に短縮する。新興国の利便性を考慮し、ドル建てで融資する「ドル借款」も可能にする。
 
中国が主導して発足予定のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対抗するため、日本政府とアジア開発銀行(ADB)との連携強化
も打ち出す。国際協力機構(JICA)とADBの協調融資を今後5年で100億ドル(約1兆2000億円)行うほか、民間プロジェクトにもADBを通じて5年で最大15億ドル(約1800億円)の投融資を行う方針を示す。
 国際協力銀行(JBIC)についても、リスクを伴う海外インフラ向けの特別勘定を創設し、積極的な投融資を促す。こうした方針を踏まえ、首相は会合でマレーシアとシンガポール間の高速鉄道計画、インドでの石炭火力発電所建設などへの参画に意欲を示す考えだ。

 軍事力を使った戦争は、いまどき先進国間ではありえませんが、経済やサイバー空間では、激しい争いが繰り広げられていることは、衆知のことです。
 経済では、金融の覇権争いを米英で長らく展開しているわけで、そこへ中国が割り込んできているのですね。
 GDP第三位の日本。民主党政権の失政で、大きく地盤沈下しましたが、安倍政権の奮闘に、日本経済の復興の期待をしています。



 # 冒頭の画像は、マレーシアで会談(11/21)した,インドのモディ首相と安倍首相
  日本、中国にリベンジ インド高速鉄道、新幹線方式採用 首脳会談で合意へ(1/2ページ) - 産経ニュース


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