中国国家統計局の18日の発表によると、中国7-9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比4.9%増、前期比1.3%増となった。前期比の伸びは、4-6月期(0.8%)の2倍近くに達した。
中国の経済成長率は常に、眉につばをつけて見るべきだ。しかし他のいくつかの指標も、見通しの改善を強く示唆していると、WSJアジア編集者のナサニエル・タプリン。
最も重要なのは、消費者向け融資が9月に急増したことだと、ナサニエル・タプリン。
住宅ローン残高の目安となる家計向けの中長期資金の貸出残高は3240億元(約6兆6300億円)増加した。増加幅は1月以来の大きさで、ここ2年ほどでも2番目となるのだそうです。
9月の小売売上高の増加率は8月から1ポイント近く上昇し、失業率は8月の5.2%から5%に低下。
製造業の投資の増加率は、年初来、前年同月比とも2カ月連続で加速した。建設業では購買担当者指数(PMI)の雇用指数が2ポイント近く上昇。
9月の住宅販売件数と住宅着工件数が小幅に改善したことと合わせ、8月下旬からの積極的な住宅市場支援策が一定の効果を上げている。特に、住宅ローンの2回目の借り手に対する条件の緩和は重要だと、ナサニエル・タプリン。
問題なのは、不動産開発業者がまだ極めて深刻な困難を抱えていることだと。
2022年時点で国内最大手だった碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)が、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)に続いて負債と未払い請負業者のブラックホールへと転落し、未完成のマンションと不幸な家庭が後に残るならば、家計の信頼感の弱々しい改善も台無しになりかねないとも。
9月は中国全体で不動産販売(面積ベース)がやや改善したが、碧桂園はその恩恵をあまり受けず、成約額は前年同月に比べ81%減少。
また、10月の消費や住宅市場に関する初期のシグナルはまちまちだ。例えば、国慶節の大型連休(9月末~10月上旬)の旅行者一人当たりの観光支出は2019年を下回っていると、ナサニエル・タプリン。
中国政府には奥の手もいくつかある。地方政府が高金利債務の借り換えを始めており、それにより23年後半にはインフラ支出に余裕ができる可能性があるとも。
結局のところ、労働市場は改善し続け、消費者は支出を続ける必要がある。不動産市場が再び急降下すれば、こうした傾向を維持することは難しくなると、ナサニエル・タプリン。
中国経済は夏の終わりに少し勢いを取り戻したが、困難を脱したというには程遠いと。
# 冒頭の画像は、まだ極めて深刻な問題を抱えている不動産の風景
この花の名前は、ホトトギス
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中国の経済成長率は常に、眉につばをつけて見るべきだ。しかし他のいくつかの指標も、見通しの改善を強く示唆していると、WSJアジア編集者のナサニエル・タプリン。
中国経済を脅かす不動産不況の暗い影 - WSJ By Nathaniel Taplin 2023年 10月 19日
中国経済はもはや、舗装されたばかりの駐車場のようではない。物事が再び動き出し、地面のひび割れからは芽吹きも見られる。だが、大手不動産開発業者も次々とひび割れして倒れるならば、この状態を維持するのは難しいかもしれない。
中国国家統計局の18日の発表によると、中国7-9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比4.9%増、前期比1.3%増となった。前期比の伸びは、4-6月期(0.8%)の2倍近くに達した。
中国の経済成長率は常に、眉につばをつけて見るべきだ。しかし政治的に脚光が当たりにくい他のいくつかの指標も、見通しの改善を強く示唆している。
最も重要なのは、消費者向け融資が9月に急増したことだ。住宅ローン残高の目安となる家計向けの中長期資金の貸出残高は3240億元(約6兆6300億円)増加した。増加幅は1月以来の大きさで、ここ2年ほどでも2番目となる。家計のリスク回避と住宅市場の冷え込みは、今年の中国経済の足かせとなってきた主な要因だ。
その他の消費者関連の指標も改善した。9月の小売売上高の増加率は8月から1ポイント近く上昇し、失業率は8月の5.2%から5%に低下した。
産業界の低迷も底を打ちつつあるようで、労働市場をさらに下支えする可能性がある。製造業の投資の増加率は、年初来、前年同月比とも2カ月連続で加速した。建設業では購買担当者指数(PMI)の雇用指数が2ポイント近く上昇した。まだ業況拡大・縮小の分かれ目である50を下回っているものの、上昇は5月以来だ。
9月の住宅販売件数と住宅着工件数が小幅に改善したことと合わせ、8月下旬からの積極的な住宅市場支援策が一定の効果を上げていることが見て取れる。特に、住宅ローンの2回目の借り手に対する条件の緩和は重要だ。
問題なのはもちろん、建設、労働市場、住宅ローン融資のすべてが先月、一様に改善したように見える中でも、不動産開発業者がまだ極めて深刻な困難を抱えていることだ。2022年時点で国内最大手だった碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)が、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)に続いて負債と未払い請負業者のブラックホールへと転落し、未完成のマンションと不幸な家庭が後に残るならば、家計の信頼感の弱々しい改善も台無しになりかねない。
9月は中国全体で不動産販売(面積ベース)がやや改善したが、碧桂園はその恩恵をあまり受けず、成約額は前年同月に比べ81%減少した。また、10月の消費や住宅市場に関する初期のシグナルはまちまちだ。例えば、国慶節の大型連休(9月末~10月上旬)の旅行者一人当たりの観光支出は2019年を下回っている。
中国政府には奥の手もいくつかある。地方政府が高金利債務の借り換えを始めており、それにより23年後半にはインフラ支出に余裕ができる可能性がある。
しかし結局のところ、労働市場は改善し続け、消費者は支出を続ける必要がある。不動産市場が再び急降下すれば、こうした傾向を維持することは難しくなるだろう。中国経済は夏の終わりに少し勢いを取り戻したが、困難を脱したというには程遠い。
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Nathaniel Taplin (ナサニエル・タプリン)
ウォールストリートジャーナルの経済および金融解説セクションであるハードオンザストリートの中国経済および政治経済の主要なコラムニスト。主な懸念事項には、米中関係、技術競争、台湾と香港、中国の労働市場と人口統計が含まれます。
中国経済はもはや、舗装されたばかりの駐車場のようではない。物事が再び動き出し、地面のひび割れからは芽吹きも見られる。だが、大手不動産開発業者も次々とひび割れして倒れるならば、この状態を維持するのは難しいかもしれない。
中国国家統計局の18日の発表によると、中国7-9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比4.9%増、前期比1.3%増となった。前期比の伸びは、4-6月期(0.8%)の2倍近くに達した。
中国の経済成長率は常に、眉につばをつけて見るべきだ。しかし政治的に脚光が当たりにくい他のいくつかの指標も、見通しの改善を強く示唆している。
最も重要なのは、消費者向け融資が9月に急増したことだ。住宅ローン残高の目安となる家計向けの中長期資金の貸出残高は3240億元(約6兆6300億円)増加した。増加幅は1月以来の大きさで、ここ2年ほどでも2番目となる。家計のリスク回避と住宅市場の冷え込みは、今年の中国経済の足かせとなってきた主な要因だ。
その他の消費者関連の指標も改善した。9月の小売売上高の増加率は8月から1ポイント近く上昇し、失業率は8月の5.2%から5%に低下した。
産業界の低迷も底を打ちつつあるようで、労働市場をさらに下支えする可能性がある。製造業の投資の増加率は、年初来、前年同月比とも2カ月連続で加速した。建設業では購買担当者指数(PMI)の雇用指数が2ポイント近く上昇した。まだ業況拡大・縮小の分かれ目である50を下回っているものの、上昇は5月以来だ。
9月の住宅販売件数と住宅着工件数が小幅に改善したことと合わせ、8月下旬からの積極的な住宅市場支援策が一定の効果を上げていることが見て取れる。特に、住宅ローンの2回目の借り手に対する条件の緩和は重要だ。
問題なのはもちろん、建設、労働市場、住宅ローン融資のすべてが先月、一様に改善したように見える中でも、不動産開発業者がまだ極めて深刻な困難を抱えていることだ。2022年時点で国内最大手だった碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)が、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)に続いて負債と未払い請負業者のブラックホールへと転落し、未完成のマンションと不幸な家庭が後に残るならば、家計の信頼感の弱々しい改善も台無しになりかねない。
9月は中国全体で不動産販売(面積ベース)がやや改善したが、碧桂園はその恩恵をあまり受けず、成約額は前年同月に比べ81%減少した。また、10月の消費や住宅市場に関する初期のシグナルはまちまちだ。例えば、国慶節の大型連休(9月末~10月上旬)の旅行者一人当たりの観光支出は2019年を下回っている。
中国政府には奥の手もいくつかある。地方政府が高金利債務の借り換えを始めており、それにより23年後半にはインフラ支出に余裕ができる可能性がある。
しかし結局のところ、労働市場は改善し続け、消費者は支出を続ける必要がある。不動産市場が再び急降下すれば、こうした傾向を維持することは難しくなるだろう。中国経済は夏の終わりに少し勢いを取り戻したが、困難を脱したというには程遠い。
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Nathaniel Taplin (ナサニエル・タプリン)
ウォールストリートジャーナルの経済および金融解説セクションであるハードオンザストリートの中国経済および政治経済の主要なコラムニスト。主な懸念事項には、米中関係、技術競争、台湾と香港、中国の労働市場と人口統計が含まれます。
最も重要なのは、消費者向け融資が9月に急増したことだと、ナサニエル・タプリン。
住宅ローン残高の目安となる家計向けの中長期資金の貸出残高は3240億元(約6兆6300億円)増加した。増加幅は1月以来の大きさで、ここ2年ほどでも2番目となるのだそうです。
9月の小売売上高の増加率は8月から1ポイント近く上昇し、失業率は8月の5.2%から5%に低下。
製造業の投資の増加率は、年初来、前年同月比とも2カ月連続で加速した。建設業では購買担当者指数(PMI)の雇用指数が2ポイント近く上昇。
9月の住宅販売件数と住宅着工件数が小幅に改善したことと合わせ、8月下旬からの積極的な住宅市場支援策が一定の効果を上げている。特に、住宅ローンの2回目の借り手に対する条件の緩和は重要だと、ナサニエル・タプリン。
問題なのは、不動産開発業者がまだ極めて深刻な困難を抱えていることだと。
2022年時点で国内最大手だった碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)が、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)に続いて負債と未払い請負業者のブラックホールへと転落し、未完成のマンションと不幸な家庭が後に残るならば、家計の信頼感の弱々しい改善も台無しになりかねないとも。
9月は中国全体で不動産販売(面積ベース)がやや改善したが、碧桂園はその恩恵をあまり受けず、成約額は前年同月に比べ81%減少。
また、10月の消費や住宅市場に関する初期のシグナルはまちまちだ。例えば、国慶節の大型連休(9月末~10月上旬)の旅行者一人当たりの観光支出は2019年を下回っていると、ナサニエル・タプリン。
中国政府には奥の手もいくつかある。地方政府が高金利債務の借り換えを始めており、それにより23年後半にはインフラ支出に余裕ができる可能性があるとも。
結局のところ、労働市場は改善し続け、消費者は支出を続ける必要がある。不動産市場が再び急降下すれば、こうした傾向を維持することは難しくなると、ナサニエル・タプリン。
中国経済は夏の終わりに少し勢いを取り戻したが、困難を脱したというには程遠いと。
# 冒頭の画像は、まだ極めて深刻な問題を抱えている不動産の風景
この花の名前は、ホトトギス
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