米連邦準備理事会(FRB)は14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、1年ぶりの利上げを全会一致で決めました。公表された声明文では「労働環境と物価上昇率の実績と見通しに鑑みて、政策金利を引き上げると決断した」との事ですが、トランプ次期政権が巨額減税などの財政拡張策を掲げ、株価や金利が上昇したことも利上げを後押しする材料となったとのことです。
予測されていたこととは言え、世界経済、特に新興国経済に与える影響が大きいのですが、低迷する中国経済への追い打ちにもなると説いていたのは、英フィナンシャル・タイムズ紙。
米FRB、1年ぶり利上げ0.25% 全会一致 :日本経済新聞
利上げに伴うドル高は、日本では円安状況を産み、輸出企業には貢献しますが、ドルと為替を連動させている元は、元高と金利上昇を生じ、それは中国国内企業に負担をかけることになるのですね。
多くの債務を抱える中国企業は、短期金利が小幅に上昇しただけでも、活動は圧迫され、デフォルトが発生し、ひいては経済成長が阻害されかねないと。
そうした状況にも関わらず、資本流出が止まらない状況も続いているため、国内の金融状況を引き締めざるを得ない。
こうした経済的なストレスに加えて、トランプ氏のホワイトハウス入りに伴う政治的不確実性が加わってストレスが増している。そこへ、追い打ちをかける米国の利上の影響なのです。
中国に対し、経済でも、政治でも、踏んだり蹴ったりのトランプ次期政権の誕生。習近平のストレスもたまる一方の様ですね。
習近平主席「トランプ劇場」に我慢の限界? :日本経済新聞
# 冒頭の画像は、利上げを発表する、FRB・イエレン議長
ムラサキシキブ
↓よろしかったら、お願いします。
予測されていたこととは言え、世界経済、特に新興国経済に与える影響が大きいのですが、低迷する中国経済への追い打ちにもなると説いていたのは、英フィナンシャル・タイムズ紙。
米FRB、1年ぶり利上げ0.25% 全会一致 :日本経済新聞
[FT]中国経済のもろさ、米利上げなら加速の恐れ :日本経済新聞 2016/12/9
FT.com Financial Times
ワシントンはドナルド・トランプ氏の到来と利上げに備えている。そんな中、中国は自国が包囲されたと感じても許されるだろう。
中国は、世界で最も借り入れの多い企業部門と振れの激しいことで悪名高い不動産部門、そして融資の資金をまかなうために金融市場での借り入れに依存する多数の銀行を抱えている国だ。
このため中国経済は金利上昇観測に特に敏感になる。実際、金利上昇の見通しはトランプ氏の大統領選出以降の米ドル高と相まって、すでに新興国市場の債券と株式を売り急ぐ動きを引き起こした。
■小幅な上昇でも企業活動を圧迫
「トランプ要因はより積極的な米国金利の引き上げをもたらす。12月に予想されている利上げだけでなく、来年も数回あるとみている」。みずほ証券アジア(香港)のチーフエコノミスト、沈建光氏は、利上げが広く予想されている来週の米連邦準備理事会(FRB)の政策決定会合に先駆けてこう語った。
「ドル高は人民元の為替レートを安定させようとする中国政府の努力を困難にする。政府は金融政策を引き締めなければならないかもしれない」
中国の企業債務は山と積み上がっている。その巨大な規模――現在、国内総生産(GDP)の250%超にのぼり、2008年の125%から大幅に増加している――は、短期金利が小幅に上昇しただけでも、企業の活動は圧迫される。デフォルト(債務不履行)が発生し、ひいては経済成長が阻害されかねないことを意味している。
英スタンダード・ライフ・インベストメンツの新興国市場担当エコノミスト、アレックス・ウルフ氏は、既存の債務の返済に必要な資金を調達するために短期金融市場に依存する企業がどんどん増えており、デフォルトリスクが高まっていると指摘。「金利の上昇、特に短期金利の上昇は、比較的弱い企業にかかる重圧を強め、デフォルトのリスクを高める」と言う。この数週間、金融状況が逼迫するにつれて、短期金利の指標である6カ月物の上海銀行間取引金利(SHIBOR)は急騰した。
■融資残高の2割程度が不良債権化
格付け会社フィッチ・レーティングスの試算は、公式統計からはうかがえない中国企業部門の苦悩の度合いを明らかにする。フィッチによると、中国の銀行システムの融資残高のうち15~21%がすでに不良債権化している。これに対し、公式統計の不良債権比率は2%未満だ。
こうした状況を背景に、中国の資本流出は急増。11月に700億ドルに迫り、中国政府の直面する課題は先鋭化している。資金が中国から流出しているため、債務を返済できない企業にもたらされる苦境にもかかわらず、国内の金融状況を引き締める以外にほとんど選択肢がない。
世界の主な金融機関で構成する国際金融協会(IIF)は、今年1~10月期の中国からの資本純流出額は計5300億ドルに達したと推計しており、10月に33カ月連続で、国からの流出資金が流入資金を上回ったという。
<中略>
■不動産部門、社債発行が減少
中国経済全般の屋台骨である不動産会社も短期金利の急上昇に極めて弱い。不動産デベロッパー各社による社債発行は、当局が10月に過熱した市場を抑制するために規則を強化し、新規プロジェクトへ投資しづらくして以来、急減した。
本紙フィナンシャル・タイムズの一部門であるFTコンフィデンシャル・リサーチによると、中国の不動産デベロッパーが11月に発行した社債はわずか120億元で、1~9月の月間平均860億元から大幅に減少している。
こうした経済的なストレスに、トランプ氏のホワイトハウス入りに伴う政治的不確実性が加わり完全になる。同氏は人民元が過小評価されているとの疑いから、中国の対米輸出に関税をかけ、中国を「為替操作国」に認定すると脅している。
「ドナルド・トランプは、金権的な内閣とともに金権的な財政計画を遂行する中で、支持者の関心をそらすために外国の敵を探しているのだろうか」。英運用会社ハーミーズ・インベストメント・マネジメントの新興国市場部門のトップ、ゲーリー・グリーンバーグ氏はこう問いかける。
トランプ氏と、米国と断交している台湾の指導者との電話会談も、米中関係を緊張させた。「台湾との電話は、非外交的なツイートと並び、(トランプ氏にとって)遠い敵を米国の病の原因だとして標的にできる」とグリーンバーグ氏は付け加える。「中国は非常に憤慨して反応するかもしれない。これはエスカレートし得るだろうか。可能性はあるが、そう言うのは少々早計だ」
By James Kynge in London
(2016年12月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
FT.com Financial Times
ワシントンはドナルド・トランプ氏の到来と利上げに備えている。そんな中、中国は自国が包囲されたと感じても許されるだろう。
中国は、世界で最も借り入れの多い企業部門と振れの激しいことで悪名高い不動産部門、そして融資の資金をまかなうために金融市場での借り入れに依存する多数の銀行を抱えている国だ。
このため中国経済は金利上昇観測に特に敏感になる。実際、金利上昇の見通しはトランプ氏の大統領選出以降の米ドル高と相まって、すでに新興国市場の債券と株式を売り急ぐ動きを引き起こした。
■小幅な上昇でも企業活動を圧迫
「トランプ要因はより積極的な米国金利の引き上げをもたらす。12月に予想されている利上げだけでなく、来年も数回あるとみている」。みずほ証券アジア(香港)のチーフエコノミスト、沈建光氏は、利上げが広く予想されている来週の米連邦準備理事会(FRB)の政策決定会合に先駆けてこう語った。
「ドル高は人民元の為替レートを安定させようとする中国政府の努力を困難にする。政府は金融政策を引き締めなければならないかもしれない」
中国の企業債務は山と積み上がっている。その巨大な規模――現在、国内総生産(GDP)の250%超にのぼり、2008年の125%から大幅に増加している――は、短期金利が小幅に上昇しただけでも、企業の活動は圧迫される。デフォルト(債務不履行)が発生し、ひいては経済成長が阻害されかねないことを意味している。
英スタンダード・ライフ・インベストメンツの新興国市場担当エコノミスト、アレックス・ウルフ氏は、既存の債務の返済に必要な資金を調達するために短期金融市場に依存する企業がどんどん増えており、デフォルトリスクが高まっていると指摘。「金利の上昇、特に短期金利の上昇は、比較的弱い企業にかかる重圧を強め、デフォルトのリスクを高める」と言う。この数週間、金融状況が逼迫するにつれて、短期金利の指標である6カ月物の上海銀行間取引金利(SHIBOR)は急騰した。
■融資残高の2割程度が不良債権化
格付け会社フィッチ・レーティングスの試算は、公式統計からはうかがえない中国企業部門の苦悩の度合いを明らかにする。フィッチによると、中国の銀行システムの融資残高のうち15~21%がすでに不良債権化している。これに対し、公式統計の不良債権比率は2%未満だ。
こうした状況を背景に、中国の資本流出は急増。11月に700億ドルに迫り、中国政府の直面する課題は先鋭化している。資金が中国から流出しているため、債務を返済できない企業にもたらされる苦境にもかかわらず、国内の金融状況を引き締める以外にほとんど選択肢がない。
世界の主な金融機関で構成する国際金融協会(IIF)は、今年1~10月期の中国からの資本純流出額は計5300億ドルに達したと推計しており、10月に33カ月連続で、国からの流出資金が流入資金を上回ったという。
<中略>
■不動産部門、社債発行が減少
中国経済全般の屋台骨である不動産会社も短期金利の急上昇に極めて弱い。不動産デベロッパー各社による社債発行は、当局が10月に過熱した市場を抑制するために規則を強化し、新規プロジェクトへ投資しづらくして以来、急減した。
本紙フィナンシャル・タイムズの一部門であるFTコンフィデンシャル・リサーチによると、中国の不動産デベロッパーが11月に発行した社債はわずか120億元で、1~9月の月間平均860億元から大幅に減少している。
こうした経済的なストレスに、トランプ氏のホワイトハウス入りに伴う政治的不確実性が加わり完全になる。同氏は人民元が過小評価されているとの疑いから、中国の対米輸出に関税をかけ、中国を「為替操作国」に認定すると脅している。
「ドナルド・トランプは、金権的な内閣とともに金権的な財政計画を遂行する中で、支持者の関心をそらすために外国の敵を探しているのだろうか」。英運用会社ハーミーズ・インベストメント・マネジメントの新興国市場部門のトップ、ゲーリー・グリーンバーグ氏はこう問いかける。
トランプ氏と、米国と断交している台湾の指導者との電話会談も、米中関係を緊張させた。「台湾との電話は、非外交的なツイートと並び、(トランプ氏にとって)遠い敵を米国の病の原因だとして標的にできる」とグリーンバーグ氏は付け加える。「中国は非常に憤慨して反応するかもしれない。これはエスカレートし得るだろうか。可能性はあるが、そう言うのは少々早計だ」
By James Kynge in London
(2016年12月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
利上げに伴うドル高は、日本では円安状況を産み、輸出企業には貢献しますが、ドルと為替を連動させている元は、元高と金利上昇を生じ、それは中国国内企業に負担をかけることになるのですね。
多くの債務を抱える中国企業は、短期金利が小幅に上昇しただけでも、活動は圧迫され、デフォルトが発生し、ひいては経済成長が阻害されかねないと。
そうした状況にも関わらず、資本流出が止まらない状況も続いているため、国内の金融状況を引き締めざるを得ない。
こうした経済的なストレスに加えて、トランプ氏のホワイトハウス入りに伴う政治的不確実性が加わってストレスが増している。そこへ、追い打ちをかける米国の利上の影響なのです。
中国に対し、経済でも、政治でも、踏んだり蹴ったりのトランプ次期政権の誕生。習近平のストレスもたまる一方の様ですね。
習近平主席「トランプ劇場」に我慢の限界? :日本経済新聞
# 冒頭の画像は、利上げを発表する、FRB・イエレン議長
ムラサキシキブ
↓よろしかったら、お願いします。