シンガポール政府の投資公社や、ノルウェーの年金基金、ロシアの石油安定基金など、産油国や経常黒字国の政府が投資目的で運用する「国有ファンド(SWF)」の規模が急拡大しているのですが、貿易黒字や人民元相場に対するドル買い為替介入で1兆2000億ドルの外貨準備を抱える中国も国営投資会社を設立する方針を表明し、米最大投資会社のブラックストーンに30億ドルを投資しました。
ブラックストーンは、軍事や衛星技術企業の株式を保有しており、上院のウェブ議員(民主党)が「安全保障上問題がある」と懸念を表明し、証券取引委員会(SEC)などに審査の実施を求めたのだそうです。
米財務省は、13日議会に提出した半年次為替報告の中で、世界の国有ファンドの運用総額を1兆5000億―2兆5000億ドルと推定する一方、「ほとんどが国際通貨基金(IMF)の外貨準備統計に計上されない」と、不透明さを指摘。投資戦略の開示も各国有ファンドでばらばらな上、不動産やデリバティブ(金融派生商品)にも資金が回されており、「規模急拡大を考えると、国際金融市場で徐々に重要度を増してくる」と述べ、「国際金融システムにとって有益かどうか疑問が生じる」と警告しています。
戦争は兵器だけではなく、お金でも行われています。
日本でも塩崎恭久官房長官が、外貨準備運用の効率向上を提言しているのだそうですが、中露のばあいは、資金の運用効率だけではなく、覇権拡大に利用する狙いがあり、米国だけでなく、日本も留意する必要があります。
国家ファンドとは違いますが、露ではガスプロムが東シベリアのガス田を開発していた英国のBPとロシアのTNKの合弁会社を強権発動し買収し、BPは閉め出されました。サハリン1の販売権もガスプロムが独占することを主張しており、中国への販売契約も破棄され、ガスプロム経由で再交渉されるか、ロシア国内に販売されることになりそうです。
日本は買わないで、中国に高値で販売されることには差し障りはありませんが、ますます横暴な暴若無人ぶりが強まってきていることは、中国と並んで警戒が必要です。
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ブラックストーンは、軍事や衛星技術企業の株式を保有しており、上院のウェブ議員(民主党)が「安全保障上問題がある」と懸念を表明し、証券取引委員会(SEC)などに審査の実施を求めたのだそうです。
潤沢な外資…中露が運営 米「国家ファンド」警戒
企業買収恐れ規制要求 (6/23 産経朝刊)
【ワシントン=渡辺浩生】輸出増で潤沢な外貨準備を抱えた中国やロシアが運営する「国家ファンド」に対し米政府が初めて懸念を表明した。22日に上場した米最大投資ファンド、ブラックストーン・グループに中国が30億ドルを出資するなど、外国政府がファンドを通じて米企業を買収することを恐れ、米政府は、国際通貨基金(IMF)や世界銀行による国家ファンドの監視や規制の検討を求めている。
<中略>
外貨準備が膨らむ国がファンド設立に走る理由は、国際収支の調整が図れると同時に、米国債だけでなく、外国の株式、不動産、デリバティブ(金融派生商品)などで外貨を運用すれば高いリターン(収益)を狙えるからだ。
その半面、リスクもある。国家ファンドは、投資方針などが不透明で金融当局による規制も緩く、金融市場の不安定要因となる。例えばA国企業をB国の国家ファンドが買収すれば、B国政府が議決権を行使してA国企業の経営に介入するかもしれない。
このため、ロワリー氏(米財務省次官代理(国際問題担当))は国家ファンドの透明性を増すことが不可欠だとして、IMFや世銀に基準や規制の設置を検討するように求めた。実際、米国では、対米外国投資委員会が外国政府系の企業による米企業買収の動きに目を光らせている。
05年に中国の国策会社、中国海洋石油(CNOOC)が米石油大手、ユノカル買収を断念、昨年、アラブ首長国連邦(UAE)の国営企業が米港湾の管理業務実施をあきらめたのは、米議会の激しい反発に遭ったからだった。
21日には米最大投資会社のブラックストーンが新規株式公開(IPO)を実施(22日上場)し、30億ドル分の株式が中国の国営投資会社に売却された。これに対し上院のウェブ議員(民主党)が「安全保障上問題がある」と懸念を表明。ブラックストーンが軍事や衛星技術企業の株式も保有しているためで、証券取引委員会(SEC)などに審査の実施を求めた。
企業買収恐れ規制要求 (6/23 産経朝刊)
【ワシントン=渡辺浩生】輸出増で潤沢な外貨準備を抱えた中国やロシアが運営する「国家ファンド」に対し米政府が初めて懸念を表明した。22日に上場した米最大投資ファンド、ブラックストーン・グループに中国が30億ドルを出資するなど、外国政府がファンドを通じて米企業を買収することを恐れ、米政府は、国際通貨基金(IMF)や世界銀行による国家ファンドの監視や規制の検討を求めている。
<中略>
外貨準備が膨らむ国がファンド設立に走る理由は、国際収支の調整が図れると同時に、米国債だけでなく、外国の株式、不動産、デリバティブ(金融派生商品)などで外貨を運用すれば高いリターン(収益)を狙えるからだ。
その半面、リスクもある。国家ファンドは、投資方針などが不透明で金融当局による規制も緩く、金融市場の不安定要因となる。例えばA国企業をB国の国家ファンドが買収すれば、B国政府が議決権を行使してA国企業の経営に介入するかもしれない。
このため、ロワリー氏(米財務省次官代理(国際問題担当))は国家ファンドの透明性を増すことが不可欠だとして、IMFや世銀に基準や規制の設置を検討するように求めた。実際、米国では、対米外国投資委員会が外国政府系の企業による米企業買収の動きに目を光らせている。
05年に中国の国策会社、中国海洋石油(CNOOC)が米石油大手、ユノカル買収を断念、昨年、アラブ首長国連邦(UAE)の国営企業が米港湾の管理業務実施をあきらめたのは、米議会の激しい反発に遭ったからだった。
21日には米最大投資会社のブラックストーンが新規株式公開(IPO)を実施(22日上場)し、30億ドル分の株式が中国の国営投資会社に売却された。これに対し上院のウェブ議員(民主党)が「安全保障上問題がある」と懸念を表明。ブラックストーンが軍事や衛星技術企業の株式も保有しているためで、証券取引委員会(SEC)などに審査の実施を求めた。
米財務省は、13日議会に提出した半年次為替報告の中で、世界の国有ファンドの運用総額を1兆5000億―2兆5000億ドルと推定する一方、「ほとんどが国際通貨基金(IMF)の外貨準備統計に計上されない」と、不透明さを指摘。投資戦略の開示も各国有ファンドでばらばらな上、不動産やデリバティブ(金融派生商品)にも資金が回されており、「規模急拡大を考えると、国際金融市場で徐々に重要度を増してくる」と述べ、「国際金融システムにとって有益かどうか疑問が生じる」と警告しています。
戦争は兵器だけではなく、お金でも行われています。
日本でも塩崎恭久官房長官が、外貨準備運用の効率向上を提言しているのだそうですが、中露のばあいは、資金の運用効率だけではなく、覇権拡大に利用する狙いがあり、米国だけでなく、日本も留意する必要があります。
国家ファンドとは違いますが、露ではガスプロムが東シベリアのガス田を開発していた英国のBPとロシアのTNKの合弁会社を強権発動し買収し、BPは閉め出されました。サハリン1の販売権もガスプロムが独占することを主張しており、中国への販売契約も破棄され、ガスプロム経由で再交渉されるか、ロシア国内に販売されることになりそうです。
日本は買わないで、中国に高値で販売されることには差し障りはありませんが、ますます横暴な暴若無人ぶりが強まってきていることは、中国と並んで警戒が必要です。
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