中国で習近平国家主席による大粛清が始まっているとの噂が絶えない。外相は不倫で解任され、国防相も失脚したとされる。
そんななかチャイナウォッチャーが注目するのが李強首相だ。
李強首相の妻や娘に関する情報がネットを駆け巡っている。
独裁下で側近中の側近のゴシップがこれほど流布されること自体が異常事態。習近平体制は末期症状なのかと、元産経新聞の中国駐在員で、中国入出国禁止となった福島香織さん。
習近平が自らお気に入りの部下たち、親信(側近)を粛清し始めた。2022年12月に外相に就任したばかりだった秦剛が外相職を解任されたのが7月。
3月に国防相兼国務委員に就任したばかりの李尚福失脚と伝えられたのが9月。
次は誰が失脚するのか、とチャイナウォッチャーの間で注目されているのが李強首相だと、福島さん。
先日から中国のネット上で李強の妻や娘の腐敗の噂がにわかに広がっているのだそうです。
李強の妻に関して流布されている情報には、経歴のほか、戸籍情報、保有する不動産の価値などが含まれている。李強の人脈に背景には、中国大企業トップや幹部らと華麗な人間関係を持つ妻の影響があったとも指摘されている。
李強の娘についても、妻と同様に経歴や人脈について詳細な記載がある。注目されるのが、欧米企業との密接な関係を指摘している点だと、福島さん。
「怪文書」がネット上で流布し始めたことについて、米スタンフォード大学研究員の呉国光は、「これは中国共産党体制の崩壊が加速している兆候ではないか?」と指摘。
側近の官僚・軍人の失脚原因が生活態度や腐敗、汚職事件への関与であるとしても、いずれも習近平が自分の眼鏡にかなったとして抜擢してきた人物たちだ。当然、その選抜のプロセスで身体検査も行っているはずである。なのに、これほどの問題が次々と急に表面化するのは、何かおかしいと、福島さん。
「怪文書」がネット上で流布し始めたことについて、米スタンフォード大学研究員の呉国光は、「これは中国共産党体制の崩壊が加速している兆候ではないか?」と指摘。
習近平が選んだ信頼する子飼いの高官たちが、今、次々と汚職や生活態度の問題が暴露され失脚しているのも、権力闘争と考えるべきなのかと、福島さん。
秦剛、李尚福がなぜ今頃「反腐敗」の目標になったのか、について呉光国は次のような仮説を提示。
「一つの解釈として、習近平はこれまで『腐敗を絶対容認しない態度』をずっと強調してきたので、今更、自分の側近だからといって、反腐敗キャンペーンの手を緩めるわけにはいかなかった。このため、秦剛や李尚福の腐敗の証拠がいったん表面化してしまうと、彼らを見逃すわけにはいかなかった」
もう一つの仮説が浮上する。習近平にはそもそも信頼する部下などいなかった、ということ。
つまり、真の独裁者には本当に信頼する部下などいない。信頼する部下がいれば、その権力の一部をその信頼する部下に任せるものだ。信頼できる人間がいないから、独裁者になるのだと、福島さん。
中国のことわざに「君主についていくのは、虎についていくようなもの(伴君如伴虎)」という言い回しがある。誰も虎と信頼関係なんて築けない、というわけだとも。
もし後者の仮説であれば、今、中国共産党ハイレベルで起きてる事象は、まさしく、習近平が、いったん信頼してみたが信頼しきれずにいた側近の粛清を始めている、ということになると。
これとよく似たことはソ連共産党史にもあったし、毛沢東時代にもあったと、福島さん。
在米華人作家の章天亮は、スターリン、毛沢東の粛清のやり方の特徴として、権力掌握前は政敵を粛清し、権力掌握後は、側近を粛清してきたと指摘。毛沢東は文革で、劉少奇、林彪らを打倒したが、2人とも元々は毛沢東から信頼され、毛沢東を支えてきた重臣習近平の反腐敗キャンペーンが、選択的な反腐敗であり、実のところ政敵を排除するためのだった。
スターリンも、ゲンリフ・ヤゴーダやニコライ・エジョフのように、スターリンのために粛清を手伝い汚れ仕事をしてきた忠臣をも最終的に粛清したのだったと。
習近平は過去十年の反腐敗キャンペーンで、江沢民派や共青団派ら政敵を徹底的に政権内から排除した。今、習近平には事実上、政敵がいなくなった状態だが、それで粛清は終わることがなく、今まで信頼していた側近たちが今度は粛清される段階になったのだ。今の習近平はスターリンや毛沢東の晩年をたどろうとしているのではないかと、福島さん。
習近平による毛沢東化、スターリン化の最終段階としての「親信粛清」であるとしても、そのトリガーがあるだろう。
噂が、習近平の元々あった疑心を刺激したというなら、その噂はひょっとして故意に、習近平を刺激するために流されたのかもしれない。
誰がこうした噂を流しているのか。
9月中旬、全国党委員会・政府秘書長会議が開催された。この会議を習近平の指示で取り仕切った人物が、蔡奇・中央弁公庁主任だ。この会議の目的は、秘書を通じて党内政府内の高官を監視するシステムを全国にいきわたらせることだという説がある。
蔡奇は全国津々浦々の官僚を監視する秘書チームのトップに君臨するのではとみられているのだそうです。
秘書を通じた官僚の監視を考えつくこと自体、習近平の病的疑心を現れである。蔡奇はこれを利用して、習近平の寵愛と信頼を自分一人に向くように、秘書の告発や噂を効果的に習近平の耳に入れようとしているのではないかと、福島さん。
蔡奇は党内序列からいえば5位、李強より下位だが、現段階では実質、ナンバー2の李強より影響力を持っているとされる。つまり、李強のライバルである。だとしたら、蔡奇・元北京市長の頭越しに首相に抜擢された元上海市長の李強が、次に危ないのでは? と。
ゴシップ話が過ぎた。理由はともかく、本当に習近平の親信粛清時代が始まるのかどうかは秋の党中央委員会総会(三中総会)で見極められるだろうと、福島さん。
だが、もし側近たちの足の引っ張りあいによる噂によって、習近平が簡単にこれまで信頼を寄せていた側近たちを排除するようなったとしたら、これは独裁者の末期症状だ。呉国光が指摘するように、体制崩壊のカウントダウンが始まっているといえるかもしれないとも。
毛沢東後に定年制の集団指導体制を採り、改革開放経済で今日の中国の大国の地位を築いた鄧小平を継ぐ共青団派を追放し、毛沢東回帰を目指す習近平ですが、毛沢東やスターリンと同じ末路を辿ることになりそうな。。
# 冒頭の画像は、李強首相
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そんななかチャイナウォッチャーが注目するのが李強首相だ。
李強首相の妻や娘に関する情報がネットを駆け巡っている。
独裁下で側近中の側近のゴシップがこれほど流布されること自体が異常事態。習近平体制は末期症状なのかと、元産経新聞の中国駐在員で、中国入出国禁止となった福島香織さん。
「次は李強首相」との噂がにわかに拡散、中国・習近平の大粛清時代に突入か 不倫疑惑の外相、国防相も失脚?独裁下でゴシップが流布する異常事態 | JBpress (ジェイビープレス) 2023.9.30(土) 福島香織:ジャーナリスト
中国で習近平国家主席による大粛清が始まっているとの噂が絶えない。外相は不倫で解任され、国防相も失脚したとされる。
そんななかチャイナウォッチャーが注目するのが李強首相だ。先日から、李強首相の妻や娘に関する情報がネットを駆け巡っている。
その真偽は不明だが、そもそも独裁下で側近中の側近のゴシップがこれほど流布されること自体が異常事態。習近平体制は末期症状なのか。
習近平が自らお気に入りの部下たち、親信(側近)を粛清し始めた。2022年12月に外相に就任したばかりだった秦剛が「生活作風」問題(不倫し、その相手が米国で出産)で外相職を解任されたのが7月*1。今年3月に国防相兼国務委員に就任したばかりの李尚福失脚と伝えられたのが9月*2。では次は誰が失脚するのか、とチャイナウォッチャーの間で注目されているのが李強首相だ。
*1:消えた中国外相・秦剛、不倫相手と噂される美人キャスターはダブルスパイ?(7月21日付、JBpress)
*2:中国国防相も失脚?不倫の外相に続く解任説も、習近平による解放軍大粛清か(9月22日付、JBpress)
というのも先日から中国のネット上で李強の妻や娘の腐敗の噂がにわかに広がっているのだ。
ネット上で拡散されているのは、中国前線というブログに書き込まれた、李強の妻と娘の経歴や写真だ。この情報の真偽については私も自信がない。李強ファミリーの情報は、考えてみればほとんど公にされていないのだ。
だが、完全にフェイクとは言い難い情報も含まれているとみられ、多くのチャイナウォッチャーが注目している。どういう噂が広がっているのかを、簡単にみてみよう。
まず、李強の妻に関して流布されている情報には、経歴のほか、戸籍情報、保有する不動産の価値などが含まれている。李強は浙江省官僚時代に民営企業振興に力を入れ、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)をはじめ、浙江民営企業家たちとの関係が深いことは良く知られている。そうした李強の人脈に背景には、中国大企業トップや幹部らと華麗な人間関係を持つ妻の影響があったとも指摘されている。
李強の娘についても、妻と同様に経歴や人脈について詳細な記載がある。注目されるのが、欧米企業との密接な関係を指摘している点だ。
こうした妻や娘に関する情報が事実なら、李強は西側企業と癒着した腐敗官僚として失脚させられる可能性は十分にあると言える。だからこそ、チャイナウォッチャーが目を皿のようにしてこのブログを分析しているのだ。
共産党体制の崩壊が加速しているのか
こうした「怪文書」がネット上で流布し始めたことについて、米スタンフォード大学研究員の呉国光ら、著名チャイナウォッチャーたちがいろいろ分析していたのが面白い。
呉国光は「これは中国共産党体制の崩壊が加速している兆候ではないか?」と指摘する。
最近における習近平側近の官僚・軍人の失脚原因が生活態度や腐敗、汚職事件への関与であるとしても、いずれも習近平が自分の眼鏡にかなったとして抜擢してきた人物たちだ。当然、その選抜のプロセスで身体検査も行っているはずである。なのに、これほどの問題が次々と急に表面化するのは、何かおかしい。
そもそも中国において腐敗は政治文化の一種であり、政治制度的なものが関係する。過去30~40年の間に一度も汚職に絡んだこともなく、愛人をもたなかった官僚など存在しないと言っても過言ではない。
習近平自身ですら、親族名義の企業や資産が海外のタックスヘイブンにあると報じられたり、愛人の噂が流れたりしてきた。習近平の反腐敗キャンペーンが、選択的な反腐敗であり、実のところ政敵を排除するための権力闘争であることは今更の話だろう。
だとすると、習近平が選んだ信頼する子飼いの高官たちが、今、次々と汚職や生活態度の問題が暴露され失脚しているのも、権力闘争と考えるべきなのか?
そもそも信頼できる部下はいなかった?
秦剛、李尚福がなぜ今頃「反腐敗」の目標になったのか、について呉光国は次のような仮説を提示していた。
「一つの解釈として、習近平はこれまで『腐敗を絶対容認しない態度』をずっと強調してきたので、今更、自分の側近だからといって、反腐敗キャンペーンの手を緩めるわけにはいかなかった。このため、秦剛や李尚福の腐敗の証拠がいったん表面化してしまうと、彼らを見逃すわけにはいかなかった」
だが、それならば習近平がこれまで行ってきた選択的な反腐敗キャンペーンの説明がつかない。栗戦書や王岐山にも汚職、腐敗の証拠はかなり表面化していた。にもかかわらず、習近平はこれを自分への絶対忠誠を誓わせるための圧力には使ったものの、処分にまでは至らなかった。
そこで、もう一つの仮説が浮上する。習近平にはそもそも信頼する部下などいなかった、ということだ。
つまり、真の独裁者には本当に信頼する部下などいない。信頼する部下がいれば、その権力の一部をその信頼する部下に任せるものだ。信頼できる人間がいないから、独裁者になるのだ。
中国のことわざに「君主についていくのは、虎についていくようなもの(伴君如伴虎)」という言い回しがある。誰も虎と信頼関係なんて築けない、というわけだ。
もし後者の仮説であれば、今、中国共産党ハイレベルで起きてる事象は、まさしく、習近平が、いったん信頼してみたが信頼しきれずにいた側近の粛清を始めている、ということになる。
これとよく似たことはソ連共産党史にもあったし、毛沢東時代にもあった。
「文革」の再演か
在米華人作家の章天亮は、スターリン、毛沢東の粛清のやり方の特徴として、権力掌握前は政敵を粛清し、権力掌握後は、側近を粛清してきたと指摘。毛沢東は文革で、劉少奇、林彪らを打倒したが、2人とも元々は毛沢東から信頼され、毛沢東を支えてきた重臣だった。毛沢東選集の編纂にも参加した毛沢東のお気に入りの秘書の田家英は、毛沢東の大躍進政策について苦言を呈し、文革発動とともに粛清された。
スターリンも、ゲンリフ・ヤゴーダやニコライ・エジョフのように、スターリンのために粛清を手伝い汚れ仕事をしてきた忠臣をも最終的に粛清したのだった。
習近平は過去十年の反腐敗キャンペーンで、江沢民派や共青団派ら政敵を徹底的に政権内から排除した。今、習近平には事実上、政敵がいなくなった状態だが、それで粛清は終わることがなく、今まで信頼していた側近たちが今度は粛清される段階になったのだ。今の習近平はスターリンや毛沢東の晩年をたどろうとしているのではないか。1966年以降の文革、あるいは1930年代の大粛清が再演されつつある、ということではないか。
さて、今年続く、異様な習近平側近たちの失脚が、習近平による毛沢東化、スターリン化の最終段階としての「親信粛清」であるとしても、そのトリガーがあるだろう。
李玉超(ロケット軍元司令)は米国留学の息子がスパイだという噂が流れ*3、秦剛(元外相)は愛人がダブルスパイだと噂され、国防相の李尚福は装備発展部長時代の調達入札に関わる汚職の噂があった。こうした噂が、習近平の元々あった疑心を刺激したというなら、その噂はひょっとして故意に、習近平を刺激するために流されたのかもしれない。
*3:秦剛は監獄に?習近平「大粛清時代」の幕開け、ロケット軍でもスパイ探しか(7月28日付、JBpress)
独対体制の末期症状
では、誰がこうした噂を流しているのか。この先は完全な憶測だが、こんな見方がある。
9月中旬、全国党委員会・政府秘書長会議が開催された。この会議を習近平の指示で取り仕切った人物が、蔡奇・中央弁公庁主任だ。この会議の目的は、秘書を通じて党内政府内の高官を監視するシステムを全国にいきわたらせることだという説がある。その説に従えば、蔡奇は全国津々浦々の官僚を監視する秘書チームのトップに君臨するのではとみられている。
こうした秘書を通じた官僚の監視を考えつくこと自体、習近平の病的疑心を現れである。蔡奇はこれを利用して、習近平の寵愛と信頼を自分一人に向くように、秘書の告発や噂を効果的に習近平の耳に入れようとしているのではないか、と噂されている。チャイナウォッチャーの間では、李玉超の息子のスパイ説が李玉超自身の秘書の告発で、背後には秘書を束ねている蔡奇がいると言われている。
蔡奇は党内序列からいえば5位、李強より下位だが、現段階では実質、ナンバー2の李強より影響力を持っているとされる。つまり、李強のライバルである。だとしたら、蔡奇・元北京市長の頭越しに首相に抜擢された元上海市長の李強が、次に危ないのでは?
今回は、ゴシップ話が過ぎた。理由はともかく、本当に習近平の親信粛清時代が始まるのかどうかは秋の党中央委員会総会(三中総会)で見極められるだろう。
だが、もし側近たちの足の引っ張りあいによる噂によって、習近平が簡単にこれまで信頼を寄せていた側近たちを排除するようなったとしたら、これは独裁者の末期症状だ。呉国光が指摘するように、体制崩壊のカウントダウンが始まっているといえるかもしれない。
中国で習近平国家主席による大粛清が始まっているとの噂が絶えない。外相は不倫で解任され、国防相も失脚したとされる。
そんななかチャイナウォッチャーが注目するのが李強首相だ。先日から、李強首相の妻や娘に関する情報がネットを駆け巡っている。
その真偽は不明だが、そもそも独裁下で側近中の側近のゴシップがこれほど流布されること自体が異常事態。習近平体制は末期症状なのか。
習近平が自らお気に入りの部下たち、親信(側近)を粛清し始めた。2022年12月に外相に就任したばかりだった秦剛が「生活作風」問題(不倫し、その相手が米国で出産)で外相職を解任されたのが7月*1。今年3月に国防相兼国務委員に就任したばかりの李尚福失脚と伝えられたのが9月*2。では次は誰が失脚するのか、とチャイナウォッチャーの間で注目されているのが李強首相だ。
*1:消えた中国外相・秦剛、不倫相手と噂される美人キャスターはダブルスパイ?(7月21日付、JBpress)
*2:中国国防相も失脚?不倫の外相に続く解任説も、習近平による解放軍大粛清か(9月22日付、JBpress)
というのも先日から中国のネット上で李強の妻や娘の腐敗の噂がにわかに広がっているのだ。
ネット上で拡散されているのは、中国前線というブログに書き込まれた、李強の妻と娘の経歴や写真だ。この情報の真偽については私も自信がない。李強ファミリーの情報は、考えてみればほとんど公にされていないのだ。
だが、完全にフェイクとは言い難い情報も含まれているとみられ、多くのチャイナウォッチャーが注目している。どういう噂が広がっているのかを、簡単にみてみよう。
まず、李強の妻に関して流布されている情報には、経歴のほか、戸籍情報、保有する不動産の価値などが含まれている。李強は浙江省官僚時代に民営企業振興に力を入れ、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)をはじめ、浙江民営企業家たちとの関係が深いことは良く知られている。そうした李強の人脈に背景には、中国大企業トップや幹部らと華麗な人間関係を持つ妻の影響があったとも指摘されている。
李強の娘についても、妻と同様に経歴や人脈について詳細な記載がある。注目されるのが、欧米企業との密接な関係を指摘している点だ。
こうした妻や娘に関する情報が事実なら、李強は西側企業と癒着した腐敗官僚として失脚させられる可能性は十分にあると言える。だからこそ、チャイナウォッチャーが目を皿のようにしてこのブログを分析しているのだ。
共産党体制の崩壊が加速しているのか
こうした「怪文書」がネット上で流布し始めたことについて、米スタンフォード大学研究員の呉国光ら、著名チャイナウォッチャーたちがいろいろ分析していたのが面白い。
呉国光は「これは中国共産党体制の崩壊が加速している兆候ではないか?」と指摘する。
最近における習近平側近の官僚・軍人の失脚原因が生活態度や腐敗、汚職事件への関与であるとしても、いずれも習近平が自分の眼鏡にかなったとして抜擢してきた人物たちだ。当然、その選抜のプロセスで身体検査も行っているはずである。なのに、これほどの問題が次々と急に表面化するのは、何かおかしい。
そもそも中国において腐敗は政治文化の一種であり、政治制度的なものが関係する。過去30~40年の間に一度も汚職に絡んだこともなく、愛人をもたなかった官僚など存在しないと言っても過言ではない。
習近平自身ですら、親族名義の企業や資産が海外のタックスヘイブンにあると報じられたり、愛人の噂が流れたりしてきた。習近平の反腐敗キャンペーンが、選択的な反腐敗であり、実のところ政敵を排除するための権力闘争であることは今更の話だろう。
だとすると、習近平が選んだ信頼する子飼いの高官たちが、今、次々と汚職や生活態度の問題が暴露され失脚しているのも、権力闘争と考えるべきなのか?
そもそも信頼できる部下はいなかった?
秦剛、李尚福がなぜ今頃「反腐敗」の目標になったのか、について呉光国は次のような仮説を提示していた。
「一つの解釈として、習近平はこれまで『腐敗を絶対容認しない態度』をずっと強調してきたので、今更、自分の側近だからといって、反腐敗キャンペーンの手を緩めるわけにはいかなかった。このため、秦剛や李尚福の腐敗の証拠がいったん表面化してしまうと、彼らを見逃すわけにはいかなかった」
だが、それならば習近平がこれまで行ってきた選択的な反腐敗キャンペーンの説明がつかない。栗戦書や王岐山にも汚職、腐敗の証拠はかなり表面化していた。にもかかわらず、習近平はこれを自分への絶対忠誠を誓わせるための圧力には使ったものの、処分にまでは至らなかった。
そこで、もう一つの仮説が浮上する。習近平にはそもそも信頼する部下などいなかった、ということだ。
つまり、真の独裁者には本当に信頼する部下などいない。信頼する部下がいれば、その権力の一部をその信頼する部下に任せるものだ。信頼できる人間がいないから、独裁者になるのだ。
中国のことわざに「君主についていくのは、虎についていくようなもの(伴君如伴虎)」という言い回しがある。誰も虎と信頼関係なんて築けない、というわけだ。
もし後者の仮説であれば、今、中国共産党ハイレベルで起きてる事象は、まさしく、習近平が、いったん信頼してみたが信頼しきれずにいた側近の粛清を始めている、ということになる。
これとよく似たことはソ連共産党史にもあったし、毛沢東時代にもあった。
「文革」の再演か
在米華人作家の章天亮は、スターリン、毛沢東の粛清のやり方の特徴として、権力掌握前は政敵を粛清し、権力掌握後は、側近を粛清してきたと指摘。毛沢東は文革で、劉少奇、林彪らを打倒したが、2人とも元々は毛沢東から信頼され、毛沢東を支えてきた重臣だった。毛沢東選集の編纂にも参加した毛沢東のお気に入りの秘書の田家英は、毛沢東の大躍進政策について苦言を呈し、文革発動とともに粛清された。
スターリンも、ゲンリフ・ヤゴーダやニコライ・エジョフのように、スターリンのために粛清を手伝い汚れ仕事をしてきた忠臣をも最終的に粛清したのだった。
習近平は過去十年の反腐敗キャンペーンで、江沢民派や共青団派ら政敵を徹底的に政権内から排除した。今、習近平には事実上、政敵がいなくなった状態だが、それで粛清は終わることがなく、今まで信頼していた側近たちが今度は粛清される段階になったのだ。今の習近平はスターリンや毛沢東の晩年をたどろうとしているのではないか。1966年以降の文革、あるいは1930年代の大粛清が再演されつつある、ということではないか。
さて、今年続く、異様な習近平側近たちの失脚が、習近平による毛沢東化、スターリン化の最終段階としての「親信粛清」であるとしても、そのトリガーがあるだろう。
李玉超(ロケット軍元司令)は米国留学の息子がスパイだという噂が流れ*3、秦剛(元外相)は愛人がダブルスパイだと噂され、国防相の李尚福は装備発展部長時代の調達入札に関わる汚職の噂があった。こうした噂が、習近平の元々あった疑心を刺激したというなら、その噂はひょっとして故意に、習近平を刺激するために流されたのかもしれない。
*3:秦剛は監獄に?習近平「大粛清時代」の幕開け、ロケット軍でもスパイ探しか(7月28日付、JBpress)
独対体制の末期症状
では、誰がこうした噂を流しているのか。この先は完全な憶測だが、こんな見方がある。
9月中旬、全国党委員会・政府秘書長会議が開催された。この会議を習近平の指示で取り仕切った人物が、蔡奇・中央弁公庁主任だ。この会議の目的は、秘書を通じて党内政府内の高官を監視するシステムを全国にいきわたらせることだという説がある。その説に従えば、蔡奇は全国津々浦々の官僚を監視する秘書チームのトップに君臨するのではとみられている。
こうした秘書を通じた官僚の監視を考えつくこと自体、習近平の病的疑心を現れである。蔡奇はこれを利用して、習近平の寵愛と信頼を自分一人に向くように、秘書の告発や噂を効果的に習近平の耳に入れようとしているのではないか、と噂されている。チャイナウォッチャーの間では、李玉超の息子のスパイ説が李玉超自身の秘書の告発で、背後には秘書を束ねている蔡奇がいると言われている。
蔡奇は党内序列からいえば5位、李強より下位だが、現段階では実質、ナンバー2の李強より影響力を持っているとされる。つまり、李強のライバルである。だとしたら、蔡奇・元北京市長の頭越しに首相に抜擢された元上海市長の李強が、次に危ないのでは?
今回は、ゴシップ話が過ぎた。理由はともかく、本当に習近平の親信粛清時代が始まるのかどうかは秋の党中央委員会総会(三中総会)で見極められるだろう。
だが、もし側近たちの足の引っ張りあいによる噂によって、習近平が簡単にこれまで信頼を寄せていた側近たちを排除するようなったとしたら、これは独裁者の末期症状だ。呉国光が指摘するように、体制崩壊のカウントダウンが始まっているといえるかもしれない。
習近平が自らお気に入りの部下たち、親信(側近)を粛清し始めた。2022年12月に外相に就任したばかりだった秦剛が外相職を解任されたのが7月。
3月に国防相兼国務委員に就任したばかりの李尚福失脚と伝えられたのが9月。
次は誰が失脚するのか、とチャイナウォッチャーの間で注目されているのが李強首相だと、福島さん。
先日から中国のネット上で李強の妻や娘の腐敗の噂がにわかに広がっているのだそうです。
李強の妻に関して流布されている情報には、経歴のほか、戸籍情報、保有する不動産の価値などが含まれている。李強の人脈に背景には、中国大企業トップや幹部らと華麗な人間関係を持つ妻の影響があったとも指摘されている。
李強の娘についても、妻と同様に経歴や人脈について詳細な記載がある。注目されるのが、欧米企業との密接な関係を指摘している点だと、福島さん。
「怪文書」がネット上で流布し始めたことについて、米スタンフォード大学研究員の呉国光は、「これは中国共産党体制の崩壊が加速している兆候ではないか?」と指摘。
側近の官僚・軍人の失脚原因が生活態度や腐敗、汚職事件への関与であるとしても、いずれも習近平が自分の眼鏡にかなったとして抜擢してきた人物たちだ。当然、その選抜のプロセスで身体検査も行っているはずである。なのに、これほどの問題が次々と急に表面化するのは、何かおかしいと、福島さん。
「怪文書」がネット上で流布し始めたことについて、米スタンフォード大学研究員の呉国光は、「これは中国共産党体制の崩壊が加速している兆候ではないか?」と指摘。
習近平が選んだ信頼する子飼いの高官たちが、今、次々と汚職や生活態度の問題が暴露され失脚しているのも、権力闘争と考えるべきなのかと、福島さん。
秦剛、李尚福がなぜ今頃「反腐敗」の目標になったのか、について呉光国は次のような仮説を提示。
「一つの解釈として、習近平はこれまで『腐敗を絶対容認しない態度』をずっと強調してきたので、今更、自分の側近だからといって、反腐敗キャンペーンの手を緩めるわけにはいかなかった。このため、秦剛や李尚福の腐敗の証拠がいったん表面化してしまうと、彼らを見逃すわけにはいかなかった」
もう一つの仮説が浮上する。習近平にはそもそも信頼する部下などいなかった、ということ。
つまり、真の独裁者には本当に信頼する部下などいない。信頼する部下がいれば、その権力の一部をその信頼する部下に任せるものだ。信頼できる人間がいないから、独裁者になるのだと、福島さん。
中国のことわざに「君主についていくのは、虎についていくようなもの(伴君如伴虎)」という言い回しがある。誰も虎と信頼関係なんて築けない、というわけだとも。
もし後者の仮説であれば、今、中国共産党ハイレベルで起きてる事象は、まさしく、習近平が、いったん信頼してみたが信頼しきれずにいた側近の粛清を始めている、ということになると。
これとよく似たことはソ連共産党史にもあったし、毛沢東時代にもあったと、福島さん。
在米華人作家の章天亮は、スターリン、毛沢東の粛清のやり方の特徴として、権力掌握前は政敵を粛清し、権力掌握後は、側近を粛清してきたと指摘。毛沢東は文革で、劉少奇、林彪らを打倒したが、2人とも元々は毛沢東から信頼され、毛沢東を支えてきた重臣習近平の反腐敗キャンペーンが、選択的な反腐敗であり、実のところ政敵を排除するためのだった。
スターリンも、ゲンリフ・ヤゴーダやニコライ・エジョフのように、スターリンのために粛清を手伝い汚れ仕事をしてきた忠臣をも最終的に粛清したのだったと。
習近平は過去十年の反腐敗キャンペーンで、江沢民派や共青団派ら政敵を徹底的に政権内から排除した。今、習近平には事実上、政敵がいなくなった状態だが、それで粛清は終わることがなく、今まで信頼していた側近たちが今度は粛清される段階になったのだ。今の習近平はスターリンや毛沢東の晩年をたどろうとしているのではないかと、福島さん。
習近平による毛沢東化、スターリン化の最終段階としての「親信粛清」であるとしても、そのトリガーがあるだろう。
噂が、習近平の元々あった疑心を刺激したというなら、その噂はひょっとして故意に、習近平を刺激するために流されたのかもしれない。
誰がこうした噂を流しているのか。
9月中旬、全国党委員会・政府秘書長会議が開催された。この会議を習近平の指示で取り仕切った人物が、蔡奇・中央弁公庁主任だ。この会議の目的は、秘書を通じて党内政府内の高官を監視するシステムを全国にいきわたらせることだという説がある。
蔡奇は全国津々浦々の官僚を監視する秘書チームのトップに君臨するのではとみられているのだそうです。
秘書を通じた官僚の監視を考えつくこと自体、習近平の病的疑心を現れである。蔡奇はこれを利用して、習近平の寵愛と信頼を自分一人に向くように、秘書の告発や噂を効果的に習近平の耳に入れようとしているのではないかと、福島さん。
蔡奇は党内序列からいえば5位、李強より下位だが、現段階では実質、ナンバー2の李強より影響力を持っているとされる。つまり、李強のライバルである。だとしたら、蔡奇・元北京市長の頭越しに首相に抜擢された元上海市長の李強が、次に危ないのでは? と。
ゴシップ話が過ぎた。理由はともかく、本当に習近平の親信粛清時代が始まるのかどうかは秋の党中央委員会総会(三中総会)で見極められるだろうと、福島さん。
だが、もし側近たちの足の引っ張りあいによる噂によって、習近平が簡単にこれまで信頼を寄せていた側近たちを排除するようなったとしたら、これは独裁者の末期症状だ。呉国光が指摘するように、体制崩壊のカウントダウンが始まっているといえるかもしれないとも。
毛沢東後に定年制の集団指導体制を採り、改革開放経済で今日の中国の大国の地位を築いた鄧小平を継ぐ共青団派を追放し、毛沢東回帰を目指す習近平ですが、毛沢東やスターリンと同じ末路を辿ることになりそうな。。
# 冒頭の画像は、李強首相
この花の名前は、シモバシラ
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