この中の東莞市は、加工製造業基地の役割を担っていたのですが、ここへきてシャッター街化が進んでいるのだそうです。
中国広東省で輸出型の外資系製造業が続々と工場閉鎖に追い込まれている。信用不安に陥った欧州に向けた輸出の低迷などで、委託生産が中心だった工場への注文がぱったり途絶えたためだ。衣料品や玩具など、90%以上の工場が撤退した広東省東莞(とうかん)市工業団地を訪ねた。(東莞市=中国広東省 河崎真澄)
「5年前に鳴り物入りで誕生した工業団地だが、ここ数カ月で工場のシャッター街になってしまった」
同市の三江工業団地を案内してくれた機械加工メーカーの台湾人社長は、ため息をついた。同団地では100以上の工場に10万人が働いていたが、そのほとんどが閉鎖されて人通りはまばらに。工場の入り口には借り手を求める赤い横断幕ばかりが目立っていた。
労働者が相手だった周囲の商店街は文字通りシャッター街に変わった。
地元紙によると、東莞市で今年1~10月に撤退か休業した外資系企業は450社にも上る。広東省の朱小丹省長代理は14日の会見で、同省からの輸出が欧州危機で受けた打撃は「2008年(の金融危機)並み」と述べた。
もっとも、同省全体の輸出入はアジア向けの輸出が好調だったことから今年1~6月は前年同期比26%増だった。しかし、10月の輸出に限れば、前月比で8・7%の減少。欧州からの商品注文が多かった同工業団地では、クリスマス商戦用の輸出品に注文キャンセルが相次ぎ、人件費など資金が回らなくなった。
一方で、広東省の製造業は人手不足にも悩まされている。3年前の金融危機で中国政府が打ち出した4兆元(約48兆円)の景気対策で公共工事など仕事が増え始め、内陸部の農民にとって、何千キロも離れた広東省など沿岸部まで出稼ぎに行くメリットは薄らいだ。
さらに広東省当局が3年前から最低賃金を毎年20%前後引き上げたことが、工場側にはコストの大幅アップとなった。東莞市では最低賃金が今年5月、月920元(約1万1千円)になったが「管理職も含めると人件費全体は3年で2倍に膨れ上がった」(日系の電子部品工場)という。
人海戦術で安価に作るという前提条件が崩れ、最大の輸出先だった欧州の経済低迷がダブルパンチとなった。広東省を先頭に走ってきた「世界の工場」は、曲がり角にさしかかった。
オリンピックが終わったら、万博が終わったらバブルがはじけると言われつつ、最低必要とされるGDP 7%成長を上回る実績を積み重ね、世界第二位に躍り出た中国経済。さらなる成長を遂げ米国に追いつき追い越すのか、リーマンショックは乗り越えたが、不動産バブル崩壊の兆しが見え始めた今度こそはじけるのか、専門家の意見も様々です。
日本の衣料メーカー(ユニクロもそのひとつ)や食品加工メーカー、米国のハイテク企業(IBM→レノボなど)が造りだしたビジネスモデルにより世界の工場として今日の発展の基盤を築いた中国経済は、低設備(不動産)コスト、低賃金が支えでした。それでも、外資系の工場による雇用や所得は向上し、富裕層も日本の総人口に匹敵する数を産み、更に政府の内需拡大政策によるインフラ建設投資などで、経済発展は海岸部から内陸部へと広がりを見せてきました。
雇用が増え、需要と供給の原理に加えた政府の格差是正政策もあり賃金も値上がりし、消費が増えさらに経済が成長するといった、懐かしい我々がいつか通った道を歩み続ける中国。我々が数十年かけた道を短期間に上り詰めた分、ちぐはぐなバランスが狂ったところもありますが、いま世界中が大なり小なり抱えて揺れている格差社会の問題にも、いち早く到達しています。
内需拡大で、世界がこぞって中国に投資進出を続けている今でも、輸出は世界一であり、世界の工場として貿易収支の黒字を誇る中国。(日本は原発→火力発電でLNG輸入増と円高・輸出減で赤字国へ転落)
その輸出が減れば、雇用減、消費減を招き、国内経済も低迷の道に入ってしまいます。そしてバブル崩壊という、これもまた我々がいつか通った道をたどることになります。
ただ一点重要な我々との相違点があります。共産党の独裁国家であり、自由を制限しコントロールしやすい社会だということです。政府の金融、経済政策が、思いのままにコントロールした社会のばで展開がすばやく出来るということです。そこで、我々の轍を踏まない方策がとれるかどうか...。
世界経済に大きな影響力を持った中国経済。ここまでは凌いで成長を続けてきましたが、単にEUの金融危機による世界経済の低迷での輸出減なのか、低賃金、低コストの基盤が立ち行かなくなる傾向としての輸出企業のシャッター街化なのか、見極めが必要で、低コスト構造の変化なのだとしたら、日本企業は脱中国で、アジア諸国へ転出しなくてはなりません。そして、安価な良品質の製品を、そこから中国へ輸出するのです。中国が自由貿易にどこまで参加するのかが問題ですが。
そのためにも、東アジア地域の貿易自由化の枠組みの主導的立場に、日本が立たねばならないのです。
# 冒頭の写真は、シャッター街化した東莞市工業団地
この花の名前は、オタカラコウ (撮影場所=六甲高山植物園)
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