Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

SAYURI

2006-09-01 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2005年/アメリカ 監督/ロブ・マーシャル
「ツィイーはミスキャストじゃないか」


「ラストサムライ」同様、「ここが違う!」とツッコミを入れないことを肝に銘じて見始める。

さて、この作品は貧しく田舎から置屋に売られてきた少女さゆりの波瀾万丈物語である。しかし、チャン・ツィイーという女優はその感情表現の豊かさにおいてとても優れた女優であるはずなのに、今作品ではどうも全体的に表情が「こわばった」ような感じが否めなかった。「何があっても動じない、凛とした一流の芸者」を演じることが邪魔をしているのか。それとも、チャン・ツィイーには、これが精一杯なのか。

会長様への秘めた思いや戦後再び芸者として復帰する決意などがもっともっと表情で伝わってもいいはずなのに。そこがとても残念。見終わった時の物足りなさは、この部分がすごく大きいと私は感じた。

私が一番楽しめたのは「アジアを代表する美しい女優たちの競演」という点においてである。もともと私はコン・リーという女優が好きだ。女の情念をぷんぷん匂わせる妖しげな役がよく似合う。なぜか「コン姐さん」と呼びたくなる(笑)。もちろん、今作でも妖艶。ただ置屋にいる時のコン姐さん、その崩れ方は芸者というより遊女だよ…。

そして豆葉を演じるミシェル・ヨー。私、この方の作品あまり見てないんですけど、一番美しかったんじゃないですか。着物が非常によく似合ってました。売れっ子芸者としての品格が漂っておりました。そして、日本代表、桃井かおり。(えっ、工藤夕貴ですかね…)まあ、何をやってもウマイですよ、この人は。日本人を日本人が演じているわけですから非常に安心して見れましたしね。

ただね、さゆり、初桃、豆葉。この主演級3人に、やはり日本人女優が入って欲しかったな。芸者とはこういうものよ!と本物の優雅な舞いを見せて欲しかった。じゃあ、誰がいるという現実的な話はおいといて。

「さゆりと会長、延さんをめぐる三角関係」か「さゆりを巡る置屋のドロドロ模様」のどちらかにもっと中心をおいても良かったんではないかな。ちょっと大風呂敷を広げてしまったなあ。だから、どれもが中途半端な感じで。「さゆりVS初桃」なのか「さゆりVSおカボ」なのか、このあたりの構図ももっとシンプルにすれば良かったんでは…とちゃちゃを入れ始めるときりがない。

気にしない、と思い始めて見たけれど、どうしても気になったのは2点。
●日本語と英語が混在している
「ねえねえ」とか「みてみて」とか何気ない日本語のセリフの後に英語。これは絶対おかしいだろう。置屋の雑踏のざわめきも日本語。とにかく全編英語にして欲しかった。会長様を「Chairman」と呼ぶのなら「延さん」は「Mr.Nobu」にしてほしい。(おカボはPumpkin!と呼ばれていたのにさ)
●BGMの尺八
何でアメリカ人はこんなに尺八ミュージックが好きなの?ぶぅうぉうぉ~~んという尺八の音色聞くと、茂みからさ~っと忍者が出てきてそうなチープなニンジャ映画を連想しちまうよ~。でも、ジョン・ウィリアムズなんだよなあ。ラストのヨーヨー・マは良かった。全部ヨーヨー・マに任せても良かったんじゃないのかなあ。

衣装や美術は、豪華絢爛。さすがハリウッド、金かかってます!でもなあ、さゆりという一人の女の人生の浮き沈みをもっと心に迫るように表現して欲しかった。そうそう、渡辺謙より役所広司の方が発音上手。そして、いつもながら、暑苦しかった。いいぞ、役所!