Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ぼくのバラ色の人生

2006-09-23 | 外国映画(は行)
★★★★☆ 1997年/ベルギー・フランス・イギリス 監督/アラン・ベルリネール

「ぼくの夢は女の子になること」


主人公リュドヴィックは、人形遊びをしたり、お化粧したり、女の子の格好をするのが大好きな少年。将来の夢は女の人になって、隣に住む男の子と結婚すること。でも、リュドヴィックが素直な気持ちで行動すればするほど、周りの大人たちは冷ややかな反応をし始め…。

かわいらしいファンタジー映画かと思ったら大間違い。けっこう、考えさせられますよ。リュドヴィックは7歳。この年頃で女の子のワンピースを着るのが好き、なんてのは、まだまだ思春期のボーダーラインでそんなに騒ぐこともないでしょ。なんて、最初は大人たちは一応見識ある「ふり」をしてる。でも、パパの上司の息子と結婚式をあげる!と言って花嫁の格好をし始めたりして、だんだん周囲を巻き込んでのトラブルに発展してしまう。

身につまされるのは、リュドヴィックの母親の反応。始めは理解のあるふりをしているんだけども、だんだん彼に対してヒステリックになっていく。私も母親なだけに、何とか自分の子供を理解したい気持ちはよくわかる。それは、母親なら人一倍そうだから、よけいに反動も大きいんだと思う。「何でママの気持ちがわからないの!」ってことだけど、そんなの子供にとってみれば「どうして僕の気持ちがわからないの」ってことでね。

彼が憧れる、少女向けテレビ番組「パムの世界」ってのが出てくるんだけど、このシーンがまあきらびやかで、カラフルで、美しい映像なの。リュドヴィックは「パムの世界」に逃げ込んでいるわけだけども、これはね、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」みたいに痛々しくない。ほんと、おとぎの世界。美しい。

父親は会社をクビになり、リュドヴィックの一家は地域社会で村八分。ただ息子が女の子の洋服着てるからって、こんなことになるか?なんて思うけど、実社会って案外そんなものかも知れない。リュドヴィックが無理矢理髪を切られるシーンは、泣けました。リュドヴィックがね、本当に天真爛漫で素直で、家族を傷つけたくないという思いが強い子だから、なおさら心が痛くなります。

たかだか7歳の男の子の嗜好にここまで過剰に反応する大人たち。でも、我々だってこの周辺人物と同じような行動をとるかも知れない。ジェンダーという枠だけではなく、子供の個性を尊重できる大人社会って何だろうかって、考えさせられる映画。88分という短さもいいし、おすすめです。