Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

スネーク・アイズ

2006-11-02 | 外国映画(さ行)
★★★★ 1998年/アメリカ 監督/ブライアン・デ・パルマ
「カメラワークを楽しむ」


デ・パルマらしいカメラワークが冴えまくり。人物の目線で動くカメラ、俯瞰で移動を続けるカメラ。様々な視点の移動が物語を一層スリリングに仕立て上げる。もちろん、お得意の左右2分割もある。

冒頭の長回しが圧巻。最初はカメラがずっとニコラス・ケイジを追っているなあ、というのは何となくわかるんだが、そのうち一体どこまでついていくんだ~と言うほどの長さにドキドキ。ボクシングの試合が始まったというのに、カメラはいっこうに試合には切り替わらない。試合はどうなってるんだ、と思ったら銃声。そこで、初めてカメラは逃げ出す群衆をとらえた俯瞰のものに切り替わる。ここまでオープニングからおよそ13分。いやはやすごい緊張感です。

そのあと、試合のシーンをそれぞれの登場人物の目線のカメラでリプレイ。謎が明らかにされてゆく。証言や語りではなく、カメラワークで謎をひもとく、なんて、さすがデ・パルマ。

汚職刑事を演じるニコラス・ケイジがいい味出してる。あんまり好みじゃないけど、今作では賄賂にまみれた刑事をキレた演技で見せる。任務からではなく、巻き添え喰らって仕方なく真実を暴き出す男になっちゃうあたりの脚本もいい。国防長官暗殺の陰謀を知り、「俺はそんなこと知りたくなかった!」と叫ぶあたり、普通のハリウッド陰謀ものとは違って妙な正義感を振りかざさないのが面白い。

だいたいのっけから「コイツがくさい」と言うのがありあり。でも、もともとこの映画は、そういう犯人捜しのスリルを作り出す気なんてさらさらないと思うよ。だからそういう謎解きの面白さを求める人には、全くピンとこない映画かもしんない。結局、デ・パルマ節が好みかどうか、というので今作の評価がまっぷたつになっちゃうんだろう。

私はこの次々に繰り出されるカメラワークにワクワクしちまった。このワクワク感がサスペンスとしてのスリルも十分に感じさせてくれましたよ。ご都合手技の展開なのか、いやいやしっかり張られた伏線によるものなのか、見終わってからいちいち考えてしまうのも、これまた楽し。ラスト・シーンの意味するものも自分なりにあれこれ推測してみたり。デ・パルマテイストが存分に楽しめる作品。